研究課題/領域番号 |
23530513
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
大門 毅 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (80329333)
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キーワード | インド / インドネシア / 企業の社会的責任 / コンプライアンス / 社会開発 / BOPビジネス |
研究概要 |
現代の企業経営は、コンプライアンスの重点化、外国企業からの敵対的買収、株主訴訟の多発等の状況を受け、経営者として遵守すべき法制度が多層化・複雑化している。他方で、純粋な営利追求のみならず、環境、ジェンダー、社会開発に具体的に貢献することが求められ、諸外国(例えばインドネシアやフィリピンを含むアジア諸国の一部)でも企業利益の一定割合を非営利事業に支出することが法制度化されている。 こうした中、アジア市場において営業活動を行う日本企業の多くも近年CSR活動への関心が高まり、中には、CSRを「事業化」した形態と考えられるいわゆる「BOPビジネス」(注:市場として未開拓の貧困層を顧客層ないし生産・販売の主体として取り込み、貧困対策・女性エンパワメント等の社会目的を達成することを目指したビジネス形態で、インドにおけるユニリーバ等の取り組みが有名)への進出を目指す企業も見られる。 本研究における分析の射程範囲は、当初計画から若干シフトがあり、現時点では、1)CSR分野における法的制度化の意義(理論・事例研究;比較企業法)、2)アジア市場(特にインド)に進出する日本企業のCSR活動の特徴(特にCSRの事業化・BOPビジネス化の動向分析;開発経済学・経営学)であり、事例研究として「インド等途上国に進出する企業に対して、CSR分野における法制度の強化(いかなる方向での強化)が、CSR活動の(広告・宣伝活動に留まらない)実質的意味、有効性、ないしCSRの本格事業化に貢献し得るのか」を当該企業へのヒアリングと類似事例のレビュー等を通じて明らかにしていきたい。 これらの問題を本格的に研究する場合、本年度で完了するのはあまりにも野心的であると考えられるため、科研費を申請(2014~2016年度)する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、民間企業の開発途上国における「社会開発的営利活動」であるBase of the Pyramid (BOP)ビジネスに焦点を当て、社会開発と営利追求が両立していくための企業経営と流通(サプライチェーン)を国内(東北)、インド・フィリピン等の事例を検討した。さらに、類似研究として、科研費(基盤研究A)(2012~2016年度)「グローバル経済におけるビジネスの変貌と進化が経済学の発展に与える影響の総合的研究」においては共同研究者として、開発途上国における企業経営(特に、会計・監査)に焦点を当て、現在国際標準化しつつある会計制度の導入状況について分析を行い、モンゴル、バングラデシュの事例を検討した。今後は研究対象国を拡大する一方、本邦企業(国内・国外)における事例を踏まえた研究に仕上げていく計画である。
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今後の研究の推進方策 |
今後、6月~年度末にかけて以下の調査を行っていく予定であり、今年度で終了しきれない分野については、改めて科研費を申請する予定である。 (1)調査準備・基本図書整備: 基本図書(和洋書)(企業データ等を含む)を整備し、夏以降に実施予定のフィールド調査(企業訪問)のための準備を行う。具体的には質問票の作成と発送である。 (2)企業訪問(計9~10社程度予定):海外でBOP事業に取り組む(計画のある)、関東・関西圏、さらには東北圏を含め、計9~10社程度の企業訪問を行う。ヒアリングで入手したデータ等をとりまとめ、学術的観点から分析を行う。 (3)調査とりまとめ・報告:学内・学外の研究者・実務家を交えて、報告会を実施し、論文としてとりまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究の最終年度であり、これまでの研究を仕上げるという意味で、BOP関連企業を数多く訪問するとともに、研究発表の機会を得ていきたいと考えている。 電子計算機・印刷機についてはすでに導入しているため、新規購入の予定はないが、引き続き書籍代がかかり、海外企業調査のための旅費もかかる。調査のとりまとめにあたっては、助手を雇用する計画であるため、若干の謝金が発生する。
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