研究課題/領域番号 |
23530514
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
岡部 幸徳 金沢工業大学, 基礎教育部, 准教授 (00465486)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 倫理的問題解決 / 中間管理職 / 可視化 / 意思決定行動設計モデル / 国際情報交流 |
研究概要 |
本研究は「中間管理職による倫理的問題解決のための意思決定の過程と行動設計の可視化」を試みる。 その初年度の主たる研究活動であるインタビュー調査から得たこれまでの知見の中で、強いて成果を挙げる必要があるならば、意思決定者は、その人物固有の法則に沿った意思決定のフレームワークを持つ可能性が高いという点があげられる。つまり、これまでインタビューを行った管理職達は、実務上、困難な意思決定に直面した折には、その事象を形成する外部要因をおさえようと試みる。その時には意識的に無意識的に、自己の持つ内部要因を拠り所として意思決定を試みていたのである。 すなわち、外部要因群として、例を挙げるなら「現状把握の試行」「直接に自己、自社に損害を与える人物の特定」「その人物の主張と要求の内容」などを可能な限り八方手を尽くし情報を得ながら、その人物の「今までの経験」、「失敗体験」、「成功体験」、「これまでの教育」、「親からの教えなど生まれ育った家庭環境」、「所属組織における責任」、「事象にかかる組織上の自己の責任の軽重」をはかる。 そのような外部要因群の把握を試みながら、「責任転嫁成功の可能性」、「組織における義務・責任の範囲」「顧客や社会、市場からの予想される評価」などの複数の内部要因と摺り合せながら意思決定する現段階では考えられる。この時の内外部両要因群には当然個人差がみられよう。しかし、平成24年度、平成25年度には、インタビュー調査これら内外要因群の追加や、各要因群共通の抽出条件なども詳らかにできよう。 いうまでもなく、これらの要因の一つひとつが本研究課題を形作るものであり、中間管理職が倫理的問題に直面した際の解決のための手順を形式知として明示するものを構成することとなろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画通り、「中間管理職による倫理的問題解決のための意思決定の過程と行動設計の可視化」を目指し研究調査を進めている。平成23年度は、予備調査期間に充てている。具体的には(1)調査に用いる事例テーマの選定と教材化 (2)その事例教材を包含するインタビュー調査用紙そのものの調製 (3)企業組織内外において倫理的問題の処理を業務とする企業の倫理担当者と、その業務を経験した元担当者を対象にインタビュー調査 を実施した。その為の対象者の選定と依頼は研究協力機関である「一般社団法人経営倫理実践研究センター(以下BERC )」の手島祥行専務理事と打ち合わせ、調査対象企業及びその担当者にインタビューを実施する方法を取った。 具体的にはインタビュー対象社を (1)電力・ガスなどの公益事業に属する企業、(2)いわゆる製造業に属する企業、(3)いわゆるサービス業に属する企業の3群に分けた。3グループへの分割理由は、電力・ガス等の供給を義務とする公益性の高い企業と財・サービスを市場へ供給する企業と間に意思決定と行動設計の相違性が認められる可能性を鑑みたものである。平成23年度は事例、及びインタビュー調査用紙案の調製を確実に行い、また、BERC手島氏の協力でインタビュー調査の方法と質問事項などを協議、手島氏の実務経験事例2つを通して、その有効性を検証した。その結果、4月から12月まで9カ月間をかけ慎重に研究調査の分析を整えることができたのは幸いである。(1)グループ10名へのインタビュー調査は、担当者6名へのインタビューと、3名のインタビュー調査用紙への事前記入を行なった。上記3名と担当者1名は24年度4月以降適宜実施予定である。なお、本調査を電子処理とする為に蘭国で開発中の「Agora3」システムを活用するために、その開発企業に要望を伝えた。ここに至り「研究計画書」通り、フェーズ1、2と概ね計画通り進んでいるといえよう。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度では、フェーズ2の予備調査最終段階からフェーズ5の本調査実施まで実行する。すなわち、公益企業群の(1)グループ、製造業企業群の(2)グループに共通の「中間管理職の倫理的問題解決の意思決定モデル(案)」を構築する。その上で予定通り、Agoraシステムをプラットホームとして本調査を実施する。平成23年度の予備調査を元にインタビュー調査対象者のあげた事例の、特に意思決定をした、行動を起こした「節目」において、各項目毎に思考・意識の表現とその表現を多数使用した語句を抜出する。それらについて「必要とする要因」「阻止する要因」「推進する要因」「可能とする要因」に分類し、意思決定に影響を与える項目を明確にする。 これらの研究の準備の為以下の点を確認する。1.調査対象企業に対して調査協力の確認と研究協力団体であるBERCの協力を再確認、2、本調査への移行の前に国内外の企業倫理研究者(日、米、蘭、英)の意見を聞くことで「中間管理職の倫理的問題解決の意思決定モデル(案)」の第三者的評価と改善が必要とされる課題を明確にしておく。これによって本研究の精度がさらに向上するものと考える。 フェーズ5では本モデル(案)を用い本モデルの有効性検証をする。これまでに蓄積した専門担当者と中間管理職の事例、及び新たに調査するBERC専門担当者と「中間管理職」社員の事例によって再度有効性検証を行ない最終調整をする。その為に全BERC会員企業の各社(平成24年4月現在110社が対象)からそれぞれ中間管理職を20社各10名を選出し「中間管理職の倫理的問題解決の意思決定モデル」を背景とした調査を行い、意識決定行動の分析とその有効性の裏付けを進める。平成25年度は本モデルの公開と、その経緯をBERCとともに研究報告書に纏める。国内外に向け報告書を基にした書籍を出版し広く社会利用に供する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度予算において、設備備品費は0円。平成24年5月現在も予定はない。消耗品費については、平成24年度予算案作成時においては配当していなかった。しかし、国外の研究者と企業担当者との意見交換の必要性も鑑み、「その他」費目から繰入れ、英日翻訳ソフトウェア(ATLASV14 134400円予定)を購入費に充当する予定である。国内旅費については、本研究のテーマ性から企業の本社所在地においてインタビューを行うことが多い。その点から東京、大阪への旅費を計上している。具体的には東京・大阪とも月1~2回を想定している。平成24年度は国外旅費は予算案作成段階では計上していない。ただし国内外研究者の意見を聞く機会を設けることを想定、計画していることから、研究の進捗によっては国外旅費として、国内旅費、および「その他」勘定科目より充当する可能性がある。人件費・謝金については、インタビューデータの整理作業を目的としてアルバイトを1名雇用する。月額17600円を上限に予算計上した。「その他」科目については、平成23年度当初、本研究に関する事例データベースの新規作成を織り込んだ予算であったが、Agora3システムの有効活用により、他の費目への振分けが可能になった。ゆえに、本費目は主にデータ銀行等振り込み手数料、および前述の英日翻訳ソフトウェアの購入と国外旅費に関する予備費用に充当する。 なお、平成23年度における消耗品費のマイナス9360円は「ICレコーダー」購入の為である。研究代表者が所持していた同機器が故障し、研究への支障発生を考慮し急遽購入した。また、国内旅費のマイナス65230円については、平成24年3月に、インタビュー対象企業よりアンケート調査への協力が得られ、研究の進捗を鑑み、急遽実施したため発生したものである。平成24年度以降の研究の進展、および予算管理上支障はないと考えられる。
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