研究課題/領域番号 |
23530517
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研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
中野 幹久 京都産業大学, 経営学部, 准教授 (70351690)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | サプライチェーン・マネジメント / パフォーマンスのトレード・オフ / トレード・オフの克服 / プロセス能力 |
研究概要 |
平成23年度は、サプライチェーンにおけるパフォーマンスのトレード・オフを克服するメカニズムに関するモデルを作成する上で、研究実施計画書の通り、主に文献調査を行い、インタビュー調査を補助的に行った。 文献調査については、SCMに関する企業事例が豊富に掲載されている『月刊ロジスティクス・ビジネス』(約10年間分)を中心に、生産管理やロジスティクス管理の主要なジャーナルと関連図書を加えて行った。また、インタビュー調査については、「15年以上にわたってサプライチェーンの業務プロセスの変革を継続しており、パフォーマンスを漸進的に向上させている企業」として、日用品業界大手の花王株式会社の協力を得ることができた。同社へのインタビューは計5回実施した。対象部門は、ロジスティクス部門、生産部門、情報システム部門である。Lambertらが提唱している業務プロセスの区分を使って、主に製造フロー管理、需要管理、注文充足、顧客サービス管理、顧客関係管理の5つの業務プロセスを中心にインタビューを行った。 文献調査とインタビュー調査を踏まえて、暫定的なモデルを作成した。具体的には、各プロセスの能力を測定する指標を開発しているところである。モデルを作成する過程で、モデルの質的向上を図るための研究者との議論(1回)、モデルの外的妥当性を確保するための他社へのインタビュー調査や実務家との議論(3回)を実施した。 平成24年1月に香港で開催されたThe Third POMS-HK International Conferenceに参加して、学会発表と情報収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的に掲げた3つのテーマ、(1)サプライチェーン・マネジメントに関する各種のアクション・プログラムが基盤能力、競争力、財務のパフォーマンスに結びつく静態的な因果関係の詳細なモデル化、(2)競争力のパフォーマンスに見られるトレード・オフを克服する動態的なパターンの整理、(3)競争力を累加的に強化する現象の検証のうち、平成23年度は当初の計画通り、(1)のモデル化に取り組んだ。年度末の段階で、モデル化は製造フロー管理、需要管理、注文充足、顧客サービス管理、顧客関係管理の5つの業務プロセスで進んでおり、サプライヤー関係管理と製品開発の2つの業務プロセスを残している。 モデルの作成が遅れ気味なのは、東日本大震災の影響で、先進企業への協力の打診やインタビューの実施が遅れたことによるものである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究目的に掲げた3つのテーマ、(1)サプライチェーン・マネジメントに関する各種のアクション・プログラムが基盤能力、競争力、財務のパフォーマンスに結びつく静態的な因果関係の詳細なモデル化、(2)競争力のパフォーマンスに見られるトレード・オフを克服する動態的なパターンの整理、(3)競争力を累加的に強化する現象の検証について、静態的な研究である(1)のモデル化に実証を追加し、一方で動態的な研究である(2)と(3)をテーマから外すように研究計画を変更したい。 理由としては、東日本大震災の影響で、先進企業へのインタビュー調査が遅れ気味であることに加えて、今後も継続的にインタビューを実施するめどはたっているものの、当初予定していた回数(年間10-15回)を実施することは難しく、動態的な研究に必要なデータを収集することが期待できないからである。一方で、静態的な研究については、先進企業へのインタビューを通じて構築した暫定的なモデルを使って、日本製造業を対象とした郵送による質問票調査のようなサーベイを実施すれば、回収率を5%と見込んでも3千件のサンプルで150件のデータを収集することができ、統計的な手法を使ってモデルの妥当性を実証的に明らかにすることが期待できる。 以上のように、今後は限られた期間で有意義な研究成果を出すために、研究テーマの絞り込みを図りたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費については、主にSCMに関する企業事例が掲載されている雑誌、生産管理やロジスティクス管理の関連図書の購入を予定している。 旅費については、主に先進企業へのインタビュー調査、モデルの質的向上を図るための研究者との議論、モデルの外的妥当性を確保するための他社へのインタビュー調査や実務家との議論、国内・国際学会での研究発表・情報収集の出張での使用を予定している。 人件費・謝金については、主に旅費で記載した調査や議論に対する謝礼での使用を予定している。 その他の費用については、主に英語論文や英語発表資料の校閲委託費、文献複写費、学会参加費としての使用を予定している。
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