知識労働者の人的資源管理を分析するためのアンケート調査を行った。ソフトウェア開発企業やコンサルティング企業、金融・保険会社等、18社から520名の知識労働者の協力が得られている。 分析の課題は大きく分けて二つである。第一の課題は多様な知識労働に応じたHRMを識別することであり、そのために、彼(彼女)らのHRMの類型化を行い、類型別に知識労働者の仕事や組織の特性を比較した。第二の課題は知識労働者の成長を促し、組織への貢献を促すHRMを明らかにすることであり、HRMの類型によって、知識労働者の成長感や効力感、ならびに組織への定着意志や、相互学習の強さを比較した。 第一の課題については4つの類型が見出された。1.非常に強く成果主義や市場志向のHRMを志向しつつ、同時に人材育成にも力を入れる「強い成果・能力主義型」、2.成果主義や市場志向と、組織志向のバランスを取ろうとする「プロセス重視の成果主義型」、3.個人の成果や外部労働市場を重視する「市場志向型」、4.市場志向も組織志向もあまり強くない「非競争型」である。成果主義や市場志向が顕著な企業では企業ブランドが高く、仕事が高度であること、組織志向のHRMの企業では仕事に企業内特殊知識が重要であること等が明らかになっている。 第二の課題については、成長感、効力感、組織への定着、相互学習のすべてにおいて「強い成果・能力主義型」が最も強いことがわかった。それに次ぐのが「プロセス重視の成果主義型」であるが、「市場志向型」との比較で顕著な差はみられない。よって知識労働者の成長や組織への貢献(定着と相互学習)を促すHRMは、成果主義や市場志向を基盤に、人材育成を組み合わせたものだと推察された。
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