研究課題/領域番号 |
23530521
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研究機関 | 大阪経済大学 |
研究代表者 |
江島 由裕 大阪経済大学, 経営学部, 教授 (00382359)
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研究分担者 |
山田 幸三 上智大学, 経済学部, 教授 (40240014)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 革新的中小企業 / 経営変化 / 企業成長 |
研究概要 |
創造性と革新性に富んだ中小企業が新たな事業開発活動を通じて、地域や一国経済の発展に寄与することは知られているものの、どのようなプロセスで厳しい外部環境をマネジメントして組織を新たな方向へ導いているのかについては十分な理解が得られているとは言い難い。特に、経営資源の乏しい中小企業が直面する経営環境に対する認識、企業戦略、組織(含む企業文化)、ガバナンス等のマネジメント諸変数の変化に注目をして、緻密に定量的かつ定性的に分析を行いその解を導こうとする研究は希薄といえる。 こうした視点にたち本研究の初年度では、創造的かつ革新的な中小企業の成長プロセスに関わる近年の欧米諸国を中心とする先行研究を収集するとともに、当該分野を専門とする国内外の研究者との複数回にわたる議論に参加するなど最先端の研究情報の収集にあたった。また、既に我々が収集した革新的な日本の中小企業の2時点データベース(2006年調査と2010年調査)の精度を高めるために、収集データの精査・修正・加工や不足データの補充の検討などを試み、今後計画している3時点データベース構築に向けた下準備を進めた。同時に、革新的な中小企業の経営に関わる質的な情報を充実させるために、日本国内の成長可能性を秘めた中小企業の動向調査や個別インタビュー調査もあわせて実施した。そして、こうした国内外の革新的中小企業についての質的ならびに量的な研究情報を研究代表者と研究分担者が相互にもちより、研究打ち合わせを複数回にわたり繰り返し、当該研究テーマに関わる理解を深めるとともに、仮説抽出に向けた議論を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、革新的な中小企業の経営と成果の変化プロセスを、長期的な視点から定性的かつ定量的に分析・考察するアプローチを採用している。 初年度においては、その第一ステップとして、プレ調査において我々が収集した革新的な中小企業の2時点データベースの精査・充実を意図していた。そこでは、入力データ情報の整合性の確認や不足データの補完方法の検討などを行い、概ねその作業は終えることができた。また、2つ目に計画をしていた欧米諸国を中心とする当該分野における最先端の先行研究の収集に関しては、海外のトップジャーナルの中から当該分野における概ね過去10年間の文献をサーチし収集して、研究代表者と研究分担者とで共通して読み・議論する論文と分担して読み・報告・議論する論文とにわけて作業を進めた。なお、論文の量が多いため、現在も作業は進行中である。 3つ目の活動計画は、国内外の当該分野の研究者との意見交換や学会を通じた当該分野の動向についての理解を深めることであった。この点については欧米諸国の学会や研究者との議論を複数回繰り返して、我々の考える分析枠組みや知見をより広くとらえ直す契機となった。引き続き緊密に世界の研究動向をウォッチしていく必要性を感じた。また、国内においては革新的な中小企業経営の質的な情報を入手するため、企業インタビュー調査や中小企業経営コンサルタントなどとの意見交換も行い、アカデミックな部分とリアルビジネスの部分の両面から革新的中小企業の動向について調査を深めることができた。そして、こうした研究情報をもとに研究代表者と研究分担者との間で中小企業経営の変化や成果に影響を与える諸要因についての議論を重ね、概ね当初意図していた研究活動は遂行できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究活動の2年目には、初年度に引き続き革新的中小企業の2時点パネルデータの整備を継続するとともに、3時点パネルデータの構築に向けた調査スキームの構築を図る予定である。具体的には、2時点での経営の質的データを獲得できた革新的中小企業の立地、企業属性、生存状況などを整理・確認して、継続調査と発展調査のための調査枠組みと項目を検討・作成するとともに予備調査も実施する計画である。そこでは、研究初年度にも実施した革新的な中小企業へのインタビュー調査を実施して、主に発展調査のための分析枠組みと調査票の設計の準備を行う。さらに、最終成果物として海外のトップジャーナルへの投稿も意識して、国際学会への参加や著名な研究者との議論を通じて、当該研究の分析や調査票の枠組みについての考えを深めて、革新的な中小企業のマネジメントの変化と経営成果との関係性に関わる分析モデルと仮説構築を十分な議論(研究打ち合わせ)を通じて実施する予定である。初年度の予算残額は、今後の国際学会への積極的な参加や海外の研究者との議論のための必要経費として残し、翌年度の研究を一層充実させていく計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度における研究計画では、より広くかつ深く当該研究テーマに関する知見を必要とするため(特に、分析枠組み、調査票の設計と仮説の構築)、初年度以上に中小企業やアントレプレナーシップに特化した専門的な議論を行う複数の国際学会への参加や新進気鋭の研究者達との深い議論が必要と判断した。そのために、初年度においては、当初予定していた調査研究活動は着実に遂行するものの、次年度における国際学会への積極的な参加や海外の研究者達との議論を一層充実させるために、必要経費として一定額を残している。こうした研究費の使用により、次年度における研究活動が迅速かつ効果的に進むことが期待できると考え実行した。
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