研究課題/領域番号 |
23530524
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
森田 雅也 関西大学, 社会学部, 教授 (40247896)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ワーク・ライフ・バランス / 自律性 / 境界決定の自律性 / 人にあわせた職場 |
研究概要 |
ワーク・ライフ・バランス(以下、WLBと略記)について考える際には、「時間に制約のある社員」と「いつでもみんながいるわけではない職場」を前提にしなければならない。これは、年功的労務管理に代表される、これまでの仕事に対する取り組み方、考え方を検討してみると明らかになる。年功的労務管理では、「時間に制約がない社員」とともに「いつでもみんながいる職場」が求められ、その条件に合わない人たちは厚遇されなかった。その人たちの中には、育児や介護などのために自分の時間すべてを組織に提供できない人たち―「時間に制約のある社員」―が含まれた。今、WLBの名の下で求められている働き方は、この点において従来とは異なる新しい働き方として認識される必要がある。 わが国の仕事の設計原理の特徴は、欧米のような職務を軸とした仕事の設計原理ではなく、職能を軸とした柔軟な職場を生み出すというものであるところに認められるが、それゆえに、働き方の問題であるWLBについても、職場という視点から接近することで理論的のみならず実務的な貢献が期待できると考えられる。 職場のあり方は、人事部門が設計した制度や規則と現場の管理者の行動によって規定される。質問票調査からは、管理者が部下の「境界決定の自律性」を認める傾向が強いほど、部下のWLBの達成度は高まることが確認されており、管理者の役割は職場のあり方を大きく左右する可能性が高いと言える。また、組織の論理からのみ職場設計を行う(それにつながる制度や規則を制定する)のではなく、「人にあわせた職場」の提供という考え方も取り入れて職場を設計していくことが組織には求められる。このように職場の設計原理を変更していくことこそが、単に制度を導入するようなことではなく、WLBの達成のためには必要なことと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画にもとづき、文献の渉猟、聞き取り調査、質問票調査(ある労組の組合員に回答を依頼、回答数287)などを行うことができた。また、成果報告としてアプライした、IFSAM2012(2012年6月26日~29日、アイルランド)での報告、"Boundary Autonomy and Work-Life Balance in Japan"もアクセプトされた。以上のことより、計画からの遅れはなく、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に引き続き、WLBを支える新しい働き方と「人にあわせた職場」を提供すること、その意義ならびに両者の関係性を追究していく。平成24年度は海外での報告も含め、研究報告の機会を多く設け、現時点での考え方に対する意見、批判、アドバイスをもらうように努める。 それらを参考にしながら、平成25年度末には、WLBを支える新しい働き方に関しては「働き方の問題としてのWLB」という枠組みから、「人にあわせた職場」の提供に関しては「職場の設計原理とWLB」という枠組みから体系的にまとまった成果を生み出したい。また、それだけにとどまらず、人口減少社会における新しい働き方の構築の理論的支柱となるものを人的資源管理論の立場から提案していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、IFSAM2012(2012年6月26日~29日、アイルランド)にて、研究協力者とともに報告を行うための費用に予算の半分以上をあてる予定である。残額については、文献・資料の収集ならびに聞き取り調査のための出張費用に用いることを予定している。
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