• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2012 年度 実施状況報告書

デジタル時代における持続的ビジネスモデルの研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530526
研究機関関西学院大学

研究代表者

玉田 俊平太  関西学院大学, 経営戦略研究科, 教授 (60312790)

研究分担者 土井 教之  関西学院大学, 経済学部, 教授 (60098431)
安田 聡子  関西学院大学, 商学部, 准教授 (90376666)
キーワードデジタル化 / モジュール化 / 価値づくり / 製品開発 / 暗黙知
研究概要

デジタル時代においてビジネスの持続性を考察する場合、模倣への防御策の確立は重要な課題のひとつである。本研究では、製品開発やサービスにおける模倣対策という視点で、いくつかある手法の中でも暗黙知的な価値形成プロセスの実現に焦点を当てている。本年度の研究の発見事項としての実績は以下のとおりである。(1) ビジネスの持続には、潜在的かつ主観的な顧客便益を継続的に発見・実現するプロセスが必要である。潜在的もしくは主観的な顧客便益は、製品化することによって顕在化してしまう。そのため、継続的に潜在ニーズを発見できる製品開発プロセスが求められることになる。(2) 暗黙知的な価値形成プロセスが必要である。それらは以下のa. b.の能力によって実現されることが、マッサージチェアの取材で発見できた。a. 高い個人能力:感覚的な便益はマッサージチェアの動きの調整によって実現される。これら便益が繊細かつ主観的であるため、その調整は技術・経験に基づく感覚で行われている。この感覚能力は人に帰属するために、この開発プロセス自体が人に依存したものになりがちである。この個人能力は様々なキャリアパスや開発経験によって形成されると考察できる。b. 組織化された共創能力:これは開発プロセスに市場の顧客と同等の感覚をもつパートナーを配置し、彼らと共に開発プロセスを進捗させるものである。具体的には、マッサージチェアや炊飯器の開発ケースであれば、工場内のアルバイトを利用したり、社内にモニターチームを結成したりして、市場と同様な顧客の感覚を利用できる開発過程の実現を試みている。これら製品の便益である「きもちよさ」「おいしさ」を数値化し製品化したとしても、売れる製品になるとは限らない。そのためマッサージチェアや炊飯器は人の感覚を開発プロセスに取り入れるような共創システムによる製品開発となっていることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

申請書で明記した研究の目的として、マッサージ技術の再現の手法から製品化のプロセスまで包括的な視点からそのビジネスモデルを探りつつ、高い国内シェアや海外への対抗力の源泉を明らかにすることを挙げている。これまでに、研究メンバーと共に2012年4月までにマッサージチェアメーカー3社 (パナソニック、ファミリー、フジ医療器) へ一次取材を完了した。これら開発取材に基づき、デジタル時代における競争力の源泉を考察する場合、以下の二点が必要であると発見できた。まず、製品開発を通して、感覚的で表現しにくくかつ潜在的な便益の提供を持続的に実現すること、続いてこれら便益を創出する顧客との対話を含む共創的な開発プロセスを実現することである。
この2点より申請時の目標はある程度達成できたと考えられる。しかし、これらはマッサージチェアという一産業の事例のみから理論化されているため、特異的な概念である可能性があり一般妥当性に対して疑問が生じる。そのために他業種の同様な製品開発も検証する必要がある。現在ジャー炊飯器の開発事例を2社(三菱電機、タイガー魔法瓶)への取材を達成し、音響機器メーカー、空気清浄機メーカーなどへの取材の依頼を実施している。
このようにマッサージチェア産業の研究を基にしたデジタル自体における持続的競争力の源泉はある程度、明確にできた。今後は、これら理論に関する他産業での妥当性の検証をしつつ、さらに精緻化する研究段階にあると考える。

今後の研究の推進方策

最終年にあたり、研究の精緻化および妥当性の向上と、研究成果の公開の二方向で推進を図る。まず精緻化および妥当性向上は、さらなる他業界の事例と理論との比較を行う。現在想定できる他業界とは炊飯器や音響機器、空気清浄機、自動車などの開発プロセスであり、その分野における感覚的な便益の実現プロセスや顧客共創プロセスについて、現在のマッサージチェアの開発プロセスと比較検証を行う。また日本だけの開発事例を検証するだけでは、国際競争力という視点での評価についての妥当性に課題があると考えられる。そのため海外の高パフォーマンスな製品開発の事例との比較が必要である。現在検討中なのは、音響機器製品における海外と国内の開発プロセスの比較であり、海外企業へ取材依頼を考えている。
もうひとつの研究成果の公開は、研究メンバーの所属する研究・技術計画学会、産業学会など、様々な学会等において、積極的、多方面に研究成果を公表しつつ、検証および理論の切磋を企図している。

次年度の研究費の使用計画

まず研究の妥当性向上と精緻化の方向において、資料費や取材費などの支出を予定している。具体的には、音響機器メーカーとして世界的に知名度の高い、デンマークBang & Olufsen社および英国Bowers & Wilkins社への取材を予定し、日本企業における開発プロセスとの比較を実施する予定である。
もうひとつの研究成果の公開については、海外や国内における学会への参加や移動・宿泊費や翻訳・構成費用などの支出を予定している。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 経験経済と中小企業2013

    • 著者名/発表者名
      土井教之
    • 雑誌名

      商工金融(5月25日刊行)

      巻: 63(5) ページ: 1-2

  • [雑誌論文] 国際競争力と国内競争-日本の製造業の実証分析-2013

    • 著者名/発表者名
      土井教之
    • 雑誌名

      公正取引委員会競争政策研究センター・ディスカッッションペーパー

      巻: 未定 ページ: 1-33

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 競争優位性を創出する製品開発における価値形成のプロセスの考察2012

    • 著者名/発表者名
      氏田壮一郎
    • 雑誌名

      経営戦略研究

      巻: 6 ページ: 43-52

  • [雑誌論文] 競争政策と消費者政策2012

    • 著者名/発表者名
      土井教之
    • 雑誌名

      公正取引

      巻: 740 ページ: 2-8

  • [学会発表] 経験型製品の開発における顧客ニーズ認識のプロセスについて

    • 著者名/発表者名
      氏田壮一郎
    • 学会等名
      研究・技術計画学会・第27回年次学術大会
    • 発表場所
      一橋大学国立キャンパス(東京都)
  • [学会発表] 感覚的便益を持つ製品の価値形成プロセスについて:マッサージチェア開発過程の事例を通して

    • 著者名/発表者名
      氏田壮一郎
    • 学会等名
      産業学会・イノベーション研究部会
    • 発表場所
      大阪市立大学大学院創造都市研究科(大阪府)
  • [学会発表] Japanese Small and Medium-Sized Enterprises and Foreign Employees

    • 著者名/発表者名
      Yasuda, Satoko
    • 学会等名
      The 32nd Nordic Conference of Ethnology and Folkloristic
    • 発表場所
      University of Bergen, Bergen, Norway.
  • [学会発表] Personal Characteristics of Academic Entrepreneurs in Japan

    • 著者名/発表者名
      Yasuda, Satoko
    • 学会等名
      EBES (Eurasia Business and Economic Society) 2012 Warsaw Conference
    • 発表場所
      Warsaw Marriot Hotel, Warsaw, Poland
  • [学会発表] Mobility of Japanese Academic Entrepreneurs: Educational, Occupational, Sectoral, and Geographical Heterogeneity in Career Paths

    • 著者名/発表者名
      Yasuda, Satoko
    • 学会等名
      SPRU (Science Policy Research, University of Sussex) Wednesday Seminar
    • 発表場所
      University of Sussex, Brighton, UK
  • [図書] 公正取引委員会競争政策研究センター 10年の歩みと今後の課題2013

    • 著者名/発表者名
      土井教之
    • 総ページ数
      71-73
    • 出版者
      公正取引委員会競争政策研究センター

URL: 

公開日: 2014-07-24  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi