研究課題/領域番号 |
23530532
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研究機関 | 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構 |
研究代表者 |
福山 圭一 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構, その他部局等, 専務理事 (30526885)
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研究分担者 |
川名 剛(川名剛) 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構, その他部局等, 主任研究員 (80567850)
宮井 博(宮井博) 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構, その他部局等, 客員研究員 (30601413)
谷本 奈丘(谷本奈丘) 公益財団法人年金シニアプラン総合研究機構, その他部局等, 研究員 (90567851)
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キーワード | 資金運用 / 年金 / 社会的責任 / 環境 / 企業統治 / ESG / CSR / SRI |
研究概要 |
本研究の目的は、日本の年金資金による効果的なESG投資のあり方を具体化することである。この点は、わが国の成長戦略とも深く関わりがあると考えられる。 現状の一般国民の意識として、年金資金によってESG投資をしてほしいかどうかの賛否については、賛成、反対、不明の3者がほぼ拮抗する状況にあることが分かった。また、国民全体としては、ESG投資に対する認知度は低いが、一方で、CSRに対しては概ね好意的であるという結果が得られた。ESG投資に関し、このような国民全体の一般的な意識を把握するのは、わが国初である。 前年度に実施した年金基金向けアンケート調査結果では、2007年に実施した「SRI」に比べ、わが国の年金基金に「ESG」が浸透していないことが分かっている。このことを踏まえ、また、社会的責任に関する国際標準ISO26000が採択されたことなどを受け、サステナブル投資としての年金SRIについてさらに検討を進める必要性が認識された。 ESG投資に関する法的・実践的課題として多岐のものが考えられるが、受託者責任との関係を整理することが重要である。また、投資先企業のガバナンスの観点から不祥事対応について考察すること、海外の年金SWFについて検討することも有意義である。非財務情報の開示については国際的な検討が進行中であり、この動向にも注目していく必要がある。 ESG投資の投資パフォーマンス上の優位性については論争があるが、本研究で実施した定量分析においては、CSR活動が株式パフォーマンスに一定の効果を及ぼすことがわが国の株式市場でも確認できた。これは、国連責任投資原則(UN-PRI)の指摘とも整合的である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、①年金資金に係る関係者(年金基金、運用会社、投資先企業、被雇用者(労働組合)、関係省庁)の意向調査、②法的基盤と実践的課題からの調査分析・考察、③ESG投資に関する定量分析、の3つのテーマから調査研究を進めている。 テーマ①では、前年度末に実施した年金加入年齢にある20歳から59歳までの国民に対するアンケート調査の集計を行った。また、前年度に行った年金基金向けアンケートの結果なども踏まえ、中間的なまとめを行い、学会発表を行った。また、今年度は、労働組合及び運用会社へのアンケートを実施した。 テーマ②では、外部専門家を招いての研究会方式により、法的枠組みの観点から整理・考察を行なう方針を掲げている。「年金基金ガバナンス、年金SWF、投資先企業」、「ガバナンス上の問題発生時の対応と回復」、「非財務情報開示、21世紀金融行動原則」、「年金基金の投資先企業への関与、先進国年金のSWF」をテーマに専門家による討議を行った。 テーマ③について、前年度に実施したE・S・Gの各要素をさらに細分化した項目を指標に用いた、リスク・リターン分析の結果を用いて、投資成果に対して有効なE・S・G項目(ESGスコア、株式パフォーマンス・リスク、企業のESG活動の三者の関係)等についての分析を行い、学会発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度末に実施した運用会社に対するアンケート結果の集計・分析や、労働組合に対するインタビューを引き続き行う。 平成25年度は本研究の最終年度であることから、これまでの研究全体のとりまとめを行うとともに、研究報告書の執筆を行う。現状の国民意識は年金基金に対しESG投資を後押しするようなものではないが、国民の理解を促進することがわが国におけるESG投資の進展に資すると考えられることから、普及啓発は重要な課題である。この観点から、研究報告書は図書として刊行することを目指したい。 また、これまでは研究者中心で研究を進めてきたが、年金基金や運用会社の関係者の参加も求め、年金SRI研究会における議論を行う。ここでは、年金資金運用の観点からわが国の成長戦略について検討することを企図している。 広く一般に向けた研究成果の発表や普及啓発を目的に、公開フォーラムを実施することも検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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