研究課題/領域番号 |
23530537
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
松隈 久昭 大分大学, 経済学部, 教授 (60238996)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ブランド / 組織力 / 水産物 / 地域団体商標 |
研究概要 |
23年度は、次年度に行うアンケート調査のプリテストを行った。その対象は、地域団体商標を得ている漁業協同組合と北海道の漁業協同組合である。プリテストとしてのアンケートの内容は、水産物のブランド化に必要な要因と課題に関するものである。具体的には、(1)ブランド化の方法、(2)ブランド化事業の効果、(3)ブランド化に関する課題、(4)漁協の組織力などである。 その結果、ブランド化事業の効果としては、価格や販売量の向上、販路の拡大という面では漁協の約半数に効果が出ていた。また、組合員の意欲の向上についても、約4割の漁協に効果がみられた。一方、ブランド化に満足しているかという問に対しては、肯定が約4割、否定が約2割、どちらとも言えないが約4割となった。このようにブランド化の成果は、漁協により異なっており、課題があることがわかる。 次に、漁協の組織力については、構成員の能力と結束力、水産物の価値と希少性などについて回答を得た。構成員の能力に関しては、肯定的回答が約半数であり、否定的回答は約7%と少ない。また、構成員の結束力に関しては、肯定的回答が約4割であり、否定的回答は約9%であった。一般に、ブランド化を進める条件として組織力が求められるが、構成員の能力と結束力に関しては条件を満たしているといえよう。 なお、水産物のブランド化に関しては、地域活性化の手段として自治体の補助が行われていることが多い。それゆえ、自治体の水産担当者にインタビュー調査を行った。その結果、水産資源保護、販路拡大に関して、各地で支援が行われていた。また、県によるブランド認定も独自の基準を設けて行われていた。 以上の調査の結果をもとに、アンケートの質問項目の修正を行い、サンプル数を増やしてアンケート調査を実施する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度は、アンケート調査のプリテストを行った。その対象は、地域団体商標を得ている漁業協同組合と北海道の漁業協同組合である。また、自治体の水産業担当者にインタビュー調査を行い、ブランド化に関する現状と課題を調べた。 アンケート調査では、主にブランド化に関する質問、漁協の組織力に関する質問を行った。その具体的な成果としては、(1)ブランド化により消費者に何をアピールしたいのか、(2)ブランド化事業によりいかなる面で効果が得られたか、(3)ブランド化に必要な要因は何か、(4)漁協の組織力はあるのか、などについて現状が理解できた。 今後は、ブランド化に関してはマーケティング、組織力に関してはVRIO分析にもとづき作成したが、回答しにくい質問は改善を図りたい。 なお、東日本大震災により、東北の漁協も大きな被害を受けている。東北の漁協を調査対象にするかどうかは、漁業の復興の度合いをみて判断したい。
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今後の研究の推進方策 |
この研究の目的は、地域団体商標を得ている水産物に関して、ブランド力の強さ、成功要因、漁協の組織力を分析することである。それゆえ、漁協を対象としたアンケート調査が主な研究方法となる。前年度はプリテストを実施したので、今年度はサンプル数、質問数を増やして、ブランド化および組織力に関する比較研究を進める。 なお、ブランド化については、ケラーのブランディング手法を参考にして、質問項目を作成する。また、水産物と農産物を比較して、ブランド化の手法の違いを検討したい。 さらに、地域団体商標の動向については、特許庁の担当者に聞き取り調査をすることも検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度は、漁協を対象とした前年のプリテストの結果をみて、アンケート内容の改善を行う。その後、アンケート調査を行い、水産物のブランド化に必要な要因と課題を明確にする。 具体的には、(1)ブランド化の方法、(2)ブランド化事業の効果、(3)ブランド化に関する課題、(4)漁協の組織力などである。特に、漁協の組織力については、漁協の責任者に評価をお願いする。それにより、漁協という組織の優位性を数値化したい。つまり、他の漁協が模倣できない強み(ケイパビリティ)を示す。このアンケートについては、郵送費を計上している。 また、漁協、自治体の水産課、小売業者に対してインタビュー調査を行い、ブランド化の現状と課題を示したい。このインタビュー調査には、旅費を計上している。
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