研究課題/領域番号 |
23530537
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
松隈 久昭 大分大学, 経済学部, 教授 (60238996)
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キーワード | ブランド / 組織力 / 水産物 / 地域団体商標 / マーケティング / 漁協 |
研究概要 |
今年度は前年のプリテストを参考にしてアンケート項目の内容を修正し、本調査を行った。調査対象は漁業協同組合である。ただし、東北および関東の太平洋側の漁協は、東北大震災からの復興が完全にはなされていない。ゆえに、西日本の漁協約700箇所をアンケート調査対象とした。 主要な調査項目は、漁業の操業形態、水産物のブランド化事業の内容と効果、ブランド化に必要な要因、漁協という組織の組織力、漁協の現状と課題である。 主な調査結果は以下のようになる。漁協の操業形態については、沿岸漁業が中心的であった。また、漁協で取り組んでいる事項としては、販売強化、資源管理、業務改善が行われている。水産物のブランド化については、漁協独自のブランド認定、自治体によるブランド認定、地域団体商標によるものと形式は多様であった。一方で、ブランド化を行っていない漁協もあった。その理由としては、ブランド化する組織力がないこと、小売業が求める一定量の水産資源が確保できないことなどである。 さらに、漁協の組織力をはかる経済価値、希少性、模倣困難性、組織的な方針についても回答を得た。特に、人材に関しては「漁協の構成員は高い能力を持っている」と「漁協の構成員の結束力が高い」という質問をした。その結果は、漁協により顕著な差がみられた。理由としては、漁協の規模、販売事業の動向が影響していると考えられる。この点については、グループ分けをして、統計分析を行いたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は、前年度のプリテストを修正し、アンケート調査を実施した。調査対象は西日本の漁協約700箇所である。回収数は約5割である。また、自治体の水産課を対象に、水産物のブランド化に関するインタビュー調査も実施した。水産課を対象とした理由は、各地の水産物のブランド化に関する情報が集中しているからである。また、ブランド化の現状と課題についても総合的な視点から見解を持っているからである。 ブランド化事業の効果については、価格の向上、販売量の拡大、販路の拡大、組合員の意欲の向上という質問を行い回答を得た。それによるとブランド化事業が必ずしも成功していない現状が理解できた。 また、水産物のブランド化に必要な要因として、商品開発、価格設定、流通チャネルの形成、プロモーションというマーケティング・マネジメントの項目を示し、回答を得た。単純集計は終えたので、多変量解析など統計分析を進めたい。さらに、水産物のブランド化に関する自由記述では、各漁協の現状と課題について回答を得た。 以上のような理由から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
この研究の目的は、地域団体商標を得ている水産物に関して、ブランド力の強さ、成功要因、漁協の組織力などを分析することである。それゆえ、漁協を対象としてアンケート調査を行った。 まず、地域団体商標については、その意義と課題を示す。次に、ブランド力の強さについては、ケラーのブランド論に基づきアンケート結果を分析する。さらに、ブランド化を実施するのは漁協という組織ゆえ、その組織力を分析する観点として、バーニーのVRIOフレームワークを用いて分析を行う。その内容は、経済価値、希少性、模倣困難性、組織的な方針である。アンケートでは、それらの点も尋ねているので統計分析を行いたい。 水産物のブランド化については、商品開発、価格設定、流通チャネルの形成、プロモーションというマーケティング・マネジメントの観点から分析を進める。 アンケート調査では、自由記述部分に各漁協の現状と課題が示されていた。それを用いて、ブランド化の成功要因や課題については、インタビュー調査を行いたい。また、生産者である漁業者と漁協から、産地卸売市場、消費地卸売市場、小売業者にいたる流通経路についても調査を行いたい。なぜなら、水産物のブランド化に関しては、それら各段階の協力が必要となるからである。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度は、アンケート調査の結果とインタビュー調査の結果をまとめ、報告書を作成する。報告書については、アンケート調査に回答してもらった漁協に送付する。ゆえに、報告書の印刷費を計上している。また、その送付に関しては、郵送費を計上している。 また、水産経済と水産物のブランド化に関する文献を購入するため、その費用を計上している。 旅費については、ブランド化に成功している漁協およびブランド化を行っているが課題がある漁協にインタビュー調査を行うために使用する。また、販売先となっている小売業に対してもインタビュー調査を行う。その理由は、水産物のブランド化には小売業の協力が必要となるからである。さらに、旅費は研究成果を報告するためにも使用する予定である。
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