本研究の目的は、地域団体商標などによりブランド化した水産物を対象として、ブランド力の強さ、成功要因、漁協の組織能力を比較分析することである。 本年度は、前年度末に行ったアンケート調査を集計し、分析を行った。アンケートの対象は、まだ東日本大震災の影響が東日本の漁業にあるため、西日本の漁協とした。アンケートの集計結果は、「水産業の活性化と水産物のブランド化に関する調査報告書(概要版)」にまとめ、報告を希望する漁協に送付した。主な、調査結果は以下のとおりである。 第1に、ブランド化に必要な要因は、鮮度、安全性、品質、漁業者の組織化と協力、認証基準の策定などと考えられている。一方で、希少性と高価格であるという要因については、意見が分かれた。第2に、漁協がブランド化事業を行う方法は、「漁協独自のブランド認定」と「都道府県によるブランド認定」が約2割である。また、「地域団体商標」によるブランド化は約1割である。一方、ブランド化事業を行っていない漁協は、約半数となった。第3に、ブランド化の効果としては、「組合員の意欲の向上」が約6割、「単価の向上」が約5割、「販売量の増加」、「安定的な販路の確保」および「販路の拡大」が約4割という結果となった。また、ブランド化事業に満足している漁協の割合は約3割である。一方、満足していない割合は約2割あり、必ずしもブランド化が上手くいっていないことが理解できる。第4に、漁協の組織能力については、組合員の能力、協力体制という要因を調べたが、肯定的な回答は約4割であり、組織力の強化が必要といえる。 現在、以上の点について、ブランド論などの視点から論文を作成中であり、今後投稿を行いたい。
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