広告効果を高くするためには、どのような広告表現が視聴者に注目してもらえるのかを把握することが重要である。広告表現は「表現形式」と「伝達内容」に分けられるが、本研究では、「伝達内容」に含まれる「商品選択基準」を受け手が重視しているケースは、重視していないケースと比べて、広告への注目度が高まり情報獲得量も多い、という仮説を設定した。そして、これをアイカメラ実験によって明らかにすることにした。例えば、食品選択時に「カロリーが低いこと」を重視する人が「低カロリー」を訴求しているCMを見た場合、重視していない人と比べて広告の総注視時間(広告全体にどれだけ注意したかを測る指標)が長く、注視点の数(広告からの情報獲得量に対応する指標)が多いという仮説を、2回の実験によって検証することにした。 第1実験は、45名の大学生に、ACC入賞作品のうち、「カロリーが低いこと」「リラックスできること」「安全性が高いこと」のいずれかを訴求している5本のCMを画面に1本ずつ提示して、その視線データを記録した。第2実験は、同様に、32名の大学生に、「カロリーが低いこと」または「安全性が高いこと」を非常に強く訴求している5本のCMを提示して視線計測を実施した。 2回の実験結果を統計的に解析したところ、上述の仮説が検証できた。さらに、①「伝達内容」と広告をしている食品イメージとの間に意外性がない場合よりも意外性のある場合(コーラが安全性を、化学調味料が無添加を、サイダーがノンカロリーを訴求しているケースなど)、または、②CMの最初から最後まで何回も「伝達内容」(例えば、低カロリー)を訴求しているCMよりも、最後のシーンで「伝達内容」をまとめて訴求しているCMの方が、仮説に示した内容の傾向が強いことが推察された。
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