研究概要 |
調査票、調査方法については昨年までと同様、郵送法とし、調査対象者はダイヤモンド社のデータベースを用いて抽出した。研究開発調査では488社に調査票を送付し、125社の回答を得た(回答率25.9%。不到達の5社を除く)。製品開発調査では、820社に送付し、137社の回答を得た(同16.7%)。7年間のトレンド変化について分析したところ、以下の点が明らかとなった。 研究開発調査でトレンド変数が有意となったのは247項目中47項目であった。これら項目から,「ユーザーへの評価、対応の低下」「研究開発のオープン化の進展と限界」「経済的報酬から地位やプロジェクト内容で報いるという研究開発におけるインセンティブ制度の変化」「海外でのR&Dの自律化と成果向上」「技術や品質の強化の一方での開発スピードの低下」など,研究開発が困難になっていることがわかった。一方で,「トップによる方向性の明示や,信頼や公正さなど組織文化の強化」が進行していることもわかった。 製品開発調査では、250項目中27項目でトレンド変数が有意となった。変化した項目から,「自社の製品、技術的な強みの低下」「ユーザーとの関係の変化」「開発プロセスでの情報収集活動の低下」「製品の複雑化」などの問題が重要化していることがわかった。製品開発調査については、破壊的イノベーションについての項目を新設した。 オープン化時代の研究開発という趣旨を実践するため、本年度は、福島原発事故以降、重要化している低線量被曝について、オープンデータを用いた分析も行った。福島県甲状腺調査の市町村データを分析したところWHO被曝線量と甲状腺ガンについては相関はなかったが、結節数とは正の相関があることがわかった。さらに、米国における核関連設備従業員疫学個票データ(CEDRプロジェクト)を用いて、多項ロジットモデルなど、個人レベルでのモデルを適用した。その結果、傾向性検定やポアソン回帰など、従来の手法では有意とならなかった場合でも有意になることが確認できた。
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