前年度までに調査したコンテンツ消費を支える対象との関係性についてのモデル化を行い、その実証のための調査を実施した。調査は音楽コンテンツおよびアニメコンテンツに関して行い、モデルの構造の違いをみた。音楽コンテンツに対してはファン歴がその後のコンテンツ消費意向に大きく影響を及ぼし、コンテンツ自体の魅力よりも、ファンとして対象に費やしたコスト(金銭的、行動、心理)がその後の消費意向に大きく影響を及ぼすことがわかった。それに対して、アニメコンテンツは特定のコンテンツの魅力ではなく、カテゴリー全体への関与の強さがその後の行動に影響を及ぼす可能性がうかがわれた。アニメコンテンツを消費し続けるのは、特定のアニメに対する魅力ではなく、趣味やライフスタイル化していることがわかった。 さらに、コンテンツを利用して特定の商品を訴求する可能性としてプロダクトプレースメントの実験を行った。オリジナルでマンガを作成し、その中に商品を登場させて、その商品に対しての認知について調べた。さらに登場させる商品のタイプによって差があるかどうかも検討した。その結果、マンガを深く読んでいた人よりも、あまりマンガに移入しない人のほうが、ストーリーや主人公の描写など詳細なことを覚えており、マンガに深く移入していた人のほうが、覚えていないことがわかった。それにより、効果的にプロダクトプレースメントを行うためには、コンテンツに対して深い移入が起こらないほうが有効である可能性も指摘できた。しかしながら、今回はコンテンツを1度読んだ実験であり、たとえば、繰り返し何度もコンテンツに接触する状況では移入とプロダクトプレースメントの関係が異なることも考えられるので、今後はその検証が必要となる。
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