これまでに、イノベーションの採用時期の予測には生得的消費者革新性より領域固有消費者革新性が有効であることが判明してきた。これを前提にするとイノベーション出現時点の眼前の製品ないし情報のみの状態に対応する必要を認識し、6月のアトランタで開催されたISMSの第36回大会において以下の2点についての研究成果を報告した:1.イノベーション出現時点の製品カテゴリー情報のない状態に対応するために、消費者の「感性の感度」と「心の強い揺れ」を提案した。2.生得的消費者革新性、領域固有消費者革新性、感性、わくわく度が相互に消費者のイノベーション採用時期にどのように影響を与えるかを共分散構造分析(AMOS)を用いて実証分析を行った。その後、「心の強い揺れ」について傾性概念としては、「わお(WOW)」を使用したが、理論的構成概念用、「理論-傾性中間概念」用の測定スケールの開発、「感度」の「理論-傾性中間概念」用の測定スケールの改良を行ったが、実用テストの実施には至っていない。以上で、論文のまとめに入ったのだが、途端にこの研究の基盤となる「理論-傾性中間概念」の理論化の脆弱性に気づいた。Carnapの構成概念が理論的構成概念と傾性概念に分かれることのみ借用しているのでその先の科学哲学と論理構成についての議論について調べた。結論として、本研究では、構成概念を上記のように二分して考える部分が重要であってその先の知見を利用する必要はないと判断した。この検討には『消費者行動研究と方法』(阿部修造2013)、『教育測定学 原著第3版』(池田等 2012)の第2章も併用したため想定以上に時間を要して、論文完成に至っていない。ただし、4件の発表のpptのURLを報告書に記載してある。 全体を通して、事前情報の乏しい状況でも適用可能なイノベーション採用過程の構築と採用行動予測の向上を図ることができた。
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