本研究の目的は抽象小売業で形成される商業集積がソーシャルキャピタルの形成に与える影響を明らかにすることである。研究全体に関しては3つの柱を立てている(1)商業集積と社会的コストの関係を探る研究(2)商業集積とソーシャルキャピタルの関係を明らかにする研究(3)ソーシャルキャピタルと地域の厚生向上に関する研究である。この3つの研究が全体を構成している。 平成26年度は、平成24年度から持ち越した東大阪市内を対象とした調査実施の不調の問題があったために、それに代わる研究対象を選定しながら、当初の研究期間を一年間継続延長を申請して研究を続けた。平成25年に調査対象として良好な関係を維持している長野県飯田市においては、(1)平成26年度は地域の伝統工芸産業である水引製造組合と飯田市役所の協力のもと、地域のソーシャルキャピタルと経済活動の関連性について研究を行った。同時に、(2)公益財団法人東京都中小企業振興公社の協力を得て東京都立川市内の錦商店街振興組合で地域住民を対象とした街頭調査を実施した。(3)国内調査では、北海道野付郡別海町においてソーシャルキャピタルが地域の厚生への影響調査として、地域の商業者をはじめ事業者に対するインタビュー調査を実施した。 一箇所での大規模なアンケート調査から、各所での小規模なアンケート調査、インタビュー調査へと当初の計画を変更することで研究を遂行することができた。予算面においても、当初科研費で充当しようと計画で計上していた部分の多くを協力先(公益財団法人東京都中小企業振興公社、別海町役場)からの経費補助を受けたため、科研費の予算執行を少額で済ませることができた。
|