研究課題/領域番号 |
23530561
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研究機関 | 沖縄国際大学 |
研究代表者 |
原田 優也 沖縄国際大学, 産業情報学部, 教授 (90352476)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ポスト違法ダウンロード / 違法ダウンロード行動メカニズム / 不正コンテンツ / デジタル海賊版 / 短期的利用者 / 長期的利用者 / 私的空間利用 / 公的空間利用 |
研究概要 |
本年度は1年目にあたり、文献調査および現地調査を行い、集中的にすすめるともに、研究成果の一部を発表した。現地調査と文献調査はタイ・シンガポールおよびオーストラリアで行った。現在、文献整理作業および現地視察の報告書作成をすすめている。 筆者は研究成果の一部を2011年10月に沖縄国際大学公開講座(うまんちゅ定例講座)にて報告した。発表テーマは「海外市場における日本製娯楽ソフトの不正利用状況と消費メカニズム」である。概要は下記のとおりである。 海外市場(アジア)における日本製娯楽ソフト(アニメ、ゲーム、映画、音楽など)の不正利用状況を広く知ってもらうため、海外調査で収集した資料や街の写真などを紹介し、不正利用行動の種類と行動が発生するメカニズムについて説明した。不正利用者の消費メカニズムは、商品の「購買意思決定」に関する心理的行動的要因が関係していることを、アジア消費者意識調査において確かめた。価格要因だけでなく非価格要因(知的財産権に関する法制度の未発達、パーソナル・ネットワーク内における海賊版に対する態度、ソフトウェアの使用経験や知識、 製品属性に対する期待など)が購買意思決定にかかわり、購買を継続すると理解することができる。アジアのインターネット利用者は利用目的によって行動が異なる傾向にある。筆者が行った海外インタビューより、インターネット利用者は、利用目的が「私的空間利用」か「公的利用」かによって、流動的ないしは応変的に不正ダウンロードを行っていることがわかった。アジアの消費者は「不正ダウンロードに対する社会的受容」の影響を特にうけやすいことが明らかになった。 この講座の内容を原稿にまとめた。『産業情報を取り巻く情報』(東洋企画、2012年出版)の「第6回 海外市場における日本製娯楽ソフトの不正利用状況と消費メカニズム」(127~157ページ)である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はアジア都市ネット・ユーザーを対象に、日本娯楽ソフトのポスト違法ダウンロード行動(Post-illegal downloading)を概念的実証的に研究する。日本製娯楽ソフトが流行するアジア諸国で調査を実施するため、具体的には、次に示す4つの課題を設定し、分析を進め、日本製娯楽ソフトのポスト違法ダウンロード行動に関する包括的な解明を図ることとしたい。(1)インターネット普及率と利用率が高いアジア都市の違法ダウンロード者を対象に、不正利用行動の動機を探り、意思決定要因を整理し、エンドユーザーの特性別に分析すること。(2)ポスト違法ダウンロード行動の総合的なプロセスとメカニズムを説明する概念モデルを構築すること。(3)アジア大都市で違法ダウンロードを経験した者を対象に定量的定性的調査を実施し、日本製娯楽ソフトのポスト違法ダウンロード行動に関する構造方程式モデルの実証研究を進める。エンドユーザーの特性別の国際比較分析により共通点・相違点を探り、基盤モデルの構築を目指すこと。(4)日本製娯楽ソフト種類別(J-POP、アニメなど)により、ポスト違法ダウンロード行動パターンの特徴と変化を比較分析し、各業界の国際マーケティング戦略や海外市場におけるコンテンツ適正利用促進策に関する示唆をまとめること。 本年度は1年目であり、課題(1)と課題(2)に取り組んだ。不正利用行動の動機および意思決定要因を整理し、ポスト違法ダウンロード行動の概念モデルを構築した。平成24年度は構築した概念モデルについて、検証を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度研究実施計画および研究手順は以下のとおりである。1)基礎データ・資料の収集 (国内:JETRO-アジア経済研究所、メディアコンテンツ関連団体などにて)。または、アジア大都市の日本製文化作品コンテンツの不正利用(再利用)に関する最新のマクロデータや報告書の収集および整理作業。 2)先行研究の整理とデジタルコンテンツの不正なオンライン利用に関する構造方程式モデルの構築 3)アジア都市調査の設計と質問紙作成、および翻訳作業 4)国内と海外調査活動の実行 5)比較分析の遂行(アンケートのデータ・ベース構築と分析) 6)研究成果中間報告書の作成。また、国内・外の関連学会・研究会にて一部の研究成果を発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度研究実施計画を達成するため、研究費の使用計画は下記のとおりである。1)資料費:図書およびデータベースの購入費2)謝礼金:研究協力者・情報提供者などへの謝礼金やアンケート集計などにかかる経費3)旅費:海外調査を対象に、違法ダウンロードした日本娯楽ソフトの消費パターンとプロセスの概念的実証的分析を行うため、海外調査を予定している。そのための関連経費。4)消耗品:パソコン関連消耗品、アンケート用紙・印刷・データ処理と保存の関連経費5)設備備品費(アンケート調査・分析に必要な備品などの購入)
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