平成25年度は最終年度であり、現地調査をすすめるとともに、これまで収集したデータを用いて、研究成果の一部を論文にまとめ発表した。 1本目は、組織における知識シェアリング行動モデルを応用し、デジタル海賊に対するインターネットユーザーの利用行動に関する意思決定プロセスを分析した。知識シェアリングモデルを展開したポスト違法ダウンロード行動モデルを構築し、短期利用者と長期利用者を対象とする、ポスト違法ダウンロード行動について分析を進めた。その結果、短期利用者と長期利用者の利用行動には差がほとんど認められないことがわかった。 2本目は、公的空間における日本製娯楽コンテンツのポスト違法ダウンロードについて調査した。筆者は、公的空間でポスト違法ダウンロードを体験したユーザーを2つのユーザー・グループ(「会社員」と「大学生」)に分け、ヒアリングを行い、公的空間でポスト違法ダウンロードを行った経験など利用行動を調査した。 3本目は、タイにおける娯楽コンテンツのファイル共有に関する調査研究を体系的にまとめた。娯楽海賊版コンテンツの供給の仕組みおよび購買者の利用意思決定などに関する資料やこれまでの調査を整理し、バンコクにおける海賊版コンテンツの利用行動を、従来型供給チャンネル(公的空間)と新型供給チャンネル(私的空間)に分け、論文にまとめた。 4本目は、東アジアおよび東南アジアにおける娯楽コンテンツのデジタル海賊コンテンツの流通状況を視察し、日本製娯楽ソフトのポスト違法ダウンロードに関する消費パターンの実態を、筆者が構築したポスト違法ダウンロード行動モデルを用いて明らかにする。
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