研究課題/領域番号 |
23530562
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
櫻田 譲 北海道大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10335763)
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研究分担者 |
大澤 弘幸 新潟経営大学, 経営情報学部, 准教授 (30468962)
大沼 宏 東京理科大学, 経営学部, 准教授 (00292079)
加藤 惠吉 弘前大学, 人文学部, 教授 (70353240)
中島 茂幸 北海商科大学, 商学部, 教授 (80438390)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 移転価格税制 / 一時所得判決 / 給与所得判決 / イベントスタディ / 3ファクターモデル / 海外子会社利益 / 税制改正 / 受取配当 |
研究概要 |
平成23年度は研究代表者と研究分担者の内、大沼・加藤両氏の3名によって移転価格税制についての新聞報道と企業評価の関連性について検証し、研究成果を第23回 税務会計研究学会(平成23年10月2日(日)於名古屋経済大学)において報告を行った。分析視角は、移転価格税制の運用について税務当局から更正や還付の指摘を受ける企業に対し、市場はどのような評価を下すかを、株価データを利用して検証した。本研究ではFama-Frenchの3ファクターモデルを用いてイベントスタディを実施し、移転価格税制の運用に関して税務当局から更正を指摘される企業は、強いマイナス評価を受けることが明らかになった。平成24年度は研究実施計画に沿って、市場からのマイナス評価が企業の税務状況、コーポレート・ガバナンス構造と系統的に関係するかを検証する計画である。 また大沼氏と共にストック・オプションと税務状況の関連性について分析を行い、ストック・オプションについての交付条件と市場評価の関連性を中心に検証を行った。具体的な研究成果としては、ストック・オプションが給与所得であるのか、一時所得であるのかについて2種類の判決が下されたそれぞれの判決公表日における株式市場超過リターンは、ストック・オプションの交付条件と有意に関連することが明らかになった。株式市場では、上述の関係を透徹してストックオプション導入企業が評価されていると考えられる。 もう一つの研究プロジェクトとして櫻田研究室に所属する大学院生である中西良之氏との共同研究において論文「外国子会社利益の国内環流に関する税制改正と市場の反応」をまとめた。同論文では税制改正が資本市場に与える影響についてイベントスタディを試みており、第20回租税資料館賞(本賞)を受賞している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は、多国籍企業における国際課税要因が資本市場に与える影響を分析することにある。したがって中西良之氏との共同研究成果である「外国子会社利益の国内環流に関する税制改正と市場の反応」は本研究が取り組むべき主たる研究課題と言える。その主たる課題が第20回租税資料館賞(本賞)を受賞していることから、本研究の達成度は着手してから間もないにも拘わらず、当初の計画以上に進展していると自信を以て言える。また大沼・加藤両氏と共に取り組む研究課題についても現在までのところ継続して検討を試みており、残された検討課題に対する分析結果について学会報告の機会を伺っている。 本研究は平成24年3月で4年の期限の内1年を経過したことになるが、前半の2年間で上記2つの検討課題が核心となってゆく。また本研究申請課題から派生した課題として、資本剰余金配当の実施を公表する法人が資本市場でいかなる評価を得るのかについて成果を導き出しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、中西氏との共同研究課題について、既に残された2つの課題へ取り組んでおり、その成果の一つは『會計』平成24年6月号に単著にて公表される見通しである。その公表予定の成果では、海外子会社に留保されている利益が国内に円滑に還流するようにと税制改正が検討される際、幾度かに渡り関連情報が資本市場へ投入されたが、それぞれの情報投入に対して反応した銘柄の企業属性にバラツキがあることを発見している。 上記課題に関連する2つ目の成果は、税制改正案に関する情報が資本市場へ投入されることでポジティブ反応した銘柄がある一方で、全く反応を示さなかった銘柄もあると考え、それら無反応となる法人群を明らかにしている。こちらは中西氏に加え、櫻田研究室に所属する博士課程の大学院生杉本匡氏を加えた3名による共同研究として成果を導出しつつある。こちらの研究成果については、本年5月19日開催の日本会計研究学会・北海道部会における自由論題報告において成果を公表し、学会誌への投稿を本年秋までに終えることを目標としている。 さらに上記課題に関連する3つ目の成果として、海外子会社を中国に多数擁する法人に対する資本市場の評価が、非中国において子会社を多数擁する法人に比し、いかなる程度異なるのかを明らかにしつつある。中国においては子会社が利益を獲得したとしても、国外への送金に制限が課せられるため、中国子会社は親会社への送金を断念し、利益を留保せざるを得ない。このような状況を投資家はいかに評価するのかについて現在検討中である。
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次年度の研究費の使用計画 |
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