日本経済は最近、明るい兆しが見えてきてはいるがまだまだ不況から脱することができない企業が多く存在する。特に中小企業は景気変動に左右されやすく、この不況色の様相が長期化している傾向が強いといえよう。また、大企業の中にも急速に資金繰りが悪化し、業績が伸びるどころか急降下しているケースも少なくない。こうした状況に手をこまねいている企業も少なくないが、リストラ、省エネなど節約を奨励し、緊縮財政により苦しい事態を乗り切ろうとするところも多いといえよう。また、中には業績をごまかし、粉飾に走っている企業もかなりの数が出てきている。本研究では、日本の倒産企業の事例を通して、粉飾決算への関与を考察し、筆者の考案した柴田モデルが倒産企業の粉飾への関与を探求するのに効果を発揮していることを論証した。また、これらの成果の一部は、日本会計学研究学会第72回大会で『粉飾の発見・防止を総括する』としてまとめ、日本独自の監査風土を念頭に置きながら学会報告した。さらに粉飾のさまざまな手口について、人文科学論叢 社会科学篇 第31号「粉飾決算発見の実証研究」を執筆・公表した。これにより一般的な会計監査手法では発見・防止が困難な循環取引を多くの粉飾企業により、実行されていることが明確になった。また、ソフトウェアの会計処理では、売り上げの計上等をめぐって、不正が頻発しており、IT企業が資金難にも関わらず、大きく業績を伸ばすように見せかけるカラクリにメスを入れた。
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