研究課題/領域番号 |
23530565
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
榎本 正博 東北大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (70313921)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 財務会計 / 利益マネジメント / 新会計基準 |
研究概要 |
利益マネジメントの動機と検出手法についての論文を執筆した(報告書執筆現在未刊行)。動機については,契約の存在が動機になる場合(経営者報酬制度,債務契約,政治的費用等)と利益マネジメント前の利益水準ないしはその変化額が動機となる場合(利益平準化,ビッグ・バス)にわけて整理した。次に利益マネジメントの検出手法は,(1)会計方針の選択やその変更を用いる方法,(2)会計発生高を計算する方法,(3)実体的裁量行動を推定する方法,(4)利益分布を用いる方法,(5)分類的操作を用いる方法,にわけて整理した。具体的には,利益を動かした額が推定不能な会計方針の選択から,開示された変更額によって推定する会計方針の変更へと研究が移行した。さらに利益マネジメントを包括的に捕捉する会計発生高,実体的裁量行動を用いる研究に発展した。どちらも利益を動かした部分をモデルで推定するのが一般的であり,モデルの精度の問題から複雑性が増すが,研究手法の進展を示しているといえる。このほか利益分布を用いる方法,分類的操作を用いる方法もその特徴を要約した。 次に,2005年4月1日から始まる事業年度から導入されている「固定資産の減損に係る会計基準」と利益マネジメントの関係について分析した。特に利益マネジメントのなかでも実体的裁量行動との関係を分析した。実体的裁量行動は売上高操作,裁量的費用の調整,過剰生産の3つに分類できる。2006年3月期の減損損失とこれら3つの実体的裁量行動との関連を分析した。この3つの実体的裁量行動はそれぞれの裁量的要素として分析に利用している。その裁量的要素の分離にはRoychowdhury (2006)のモデルを使用した。すると多額の減損損失と異常キャッシュ・フロー(売上高操作の代理変数)とがプラスの相関関係を有していた。他の2つは特に強い関係は見いだすことができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来最終年に予定してした各種利益マネジメントの動機とその手段についての論文を先行してまとめたこと,「固定資産の減損に関する会計基準」に関する研究を先行して実施した。しかし,平成23年度に実施する予定であった会計基準に対する研究が平成24年度の実施となった。これが全体の研究に与える影響は明らかではないが,おおむね順調といえる範囲にあるといえるであろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は当初予定を変更し,各種利益マネジメントの動機とその手段についての論文を先行してまとめ,既存のデータベースで利用可能な固定資産の減損に係る会計基準における分析を先に実施した。 平成24年度は,減損会計基準の分析のめどが立てば,資産除去債務に関する会計基準,退職給付に係る会計基準等の分析を進めていく予定である。それ以外の研究の推進方策は予定通りとする。 これとは別に,各種利益マネジメントの把握方法については,平成23年度に引き続き,最新の研究で用いられている方法を,海外ジャーナル等の論文から収集する。利益マネジメントの把握手法の研究もあわせて進展させたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度において,本来最終年に予定してした各種利益マネジメントの動機とその手段についての論文を先行してまとめ,既存のデータベースで利用可能な固定資産の減損に係る会計基準における分析を先に実施した。よって,当初予定していたデータ入力の依頼を延期し,謝金の発生がなかった。また,年度途中に研究機関の異動が決定した。データベースの使用権は購入した研究機関に所属するものに限定される。そのため購入後使用権の問題が発生するデータベース等の購入を控えた。そのため「次年度使用額」が発生している。延期したこれらの予定に伴う経費は,平成24年度に当初予定した額とあわせて必要な経費として請求する。
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