研究概要 |
本研究の目的は,財務情報・非財務情報の提供の仕方によって,従業員の意思決定や業績がどのような影響を受けるのかを,実験によって解明し,実用的な利益管理システムのデザインに貢献することである。 平成25年度の研究実施計画では,研究内容をさらに深化させるため新たな実験の実施をめざし,財務及び非財務の情報の提供の仕方が,上司による部下の評価に与える影響の解明を計画した。従業員の意思決定や意思決定の結果としての業績は,業績を上司がどのように評価するかに大きな影響を受けるからである。 平成25年度において,ビジネスマンを参加者とする新たな実験を実施した。実験では,業績指標の種類・数(財務情報4個に非財務情報を0個,3個,6個を合わせた合計4個,7個,10個の3ケース),参加者の個人差変数としてのNeed For Cognition(NFC: Cacioppo & Petty, 1982: 日本語版 神山・藤原,1991)と,業績指標に対する再認との関係を測定した。4個の財務情報に非財務情報を加えると情報負荷が大きくなるため,参加者は財務情報の利用すらあきらめてしまうが,それでもNFCの高い参加者は,財務情報に加えて顧客に関する非財務情報だけは利用しようとする傾向が示された。この成果は平成26年5月に開催される2014European Accounting Congress(ヨーロッパ会計学会)で報告し,学界・実務界に発信する。 本研究から,業績評価に利用する情報の種類・数とマネジャーのNFCとの関係に注意する必要性が示唆され,マネジャーのNFCレベルに合わせた業績情報の種類・数を提供する利益管理システムが望ましいとの含意を得た。NFCという視点を取り入れた利益管理システムをデザインするため,企業向けのアンケートにNFCを取り込むことを検討したが,実施するまでには至らなかった。
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