研究課題/領域番号 |
23530570
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大森 明 横浜国立大学, 経営学部, 准教授 (00340141)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | マクロ政府会計 / ミクロ政府会計 / 政府全体決算書 / 国民勘定 / 環境会計 / PSRモデル |
研究概要 |
本年度は、政府・自治体環境会計の理論的な基礎研究を行った。具体的には、社会学におけるミクロとマクロのリンク論をサーベイし、会計学におけるミクロとマクロのリンク論との同質性や相違点などを文献調査した。こうした基礎研究の結果、本研究が対象としている政府や自治体といった公的部門の会計(政府会計)において、ミクロとマクロのリンク論について研究する必要性を認識するに至った。 政府会計は政府の活動の結果を体系的に認識、測定および開示する仕組みであるが、それには、一般に公正妥当と認められた会計基準(GAAP)に従って作成される決算書などの政府会計分野と、一国全体を会計実体としてとらえるマクロ会計により作成される一般政府部門または公的部門の政府会計分野という2つの会計領域が存在している。ともに政府活動を対象とした会計領域であるため、前者をミクロ政府会計、後者をマクロ政府会計と呼ぶ。 本年度の研究では、イギリスにおける公的部門全体の決算書(政府全体決算書という)を作成する取り組みに着目した。イギリスの政府全体決算書は、イギリス全体の公的部門に属する組織すべて(政府、自治体、公企業等)を一つの連結決算書に集約するものであり、その財政政策の立案・評価への役立ちが期待されている。他方、イギリスでは伝統的に財政政策の立案・評価には、国民勘定(国民勘定体系:SNA)などに代表されるマクロ政府会計から得られる情報を活用してきた。上記の政府全体決算書もそしてマクロ政府会計(における公的部門)の情報もともに同じ政府活動を対象としていることから、異なる双方の会計システムから政府活動へのアプローチを比較検討した。その結果、政府全体決算書は、マクロ会計情報と各府省等のミクロ会計情報とを架橋する役割を担っていることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度において実施した基礎研究は、非常に膨大な作業を必要とした。つまり、当初想定していなかった政府会計におけるミクロ・マクロリンクの問題を研究する必要性を生じせしめ、その実際の適用例であるイギリスの政府全体決算書の動向を把握するとともに、マクロ政府会計との連携について研究することに多くの時間が割かれてしまった。当初予定していた、環境指標の研究については、文献レビュー等の形で進めることはできたが、実践的な側面に研究を展開することができなかった。 しかし、今回整理した政府会計におけるミクロ・マクロリンクの考え方は、それを環境政策分野に適用することによって、環境政策マネジメント会計の基礎理論を形成することに貢献すると考えられる。よって、次年度以降、より実践的研究を進めることによって当初の研究目的の達成を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に実施した基礎研究である政府会計におけるミクロ・マクロのリンク論を踏まえ、環境政策マネジメントに資する政府会計の在り方を考察する。そのために、国全体や地域全体といったマクロレベル(メゾレベルを含む)での環境負荷、環境状態および環境圧力(PSR)と、経済主体による経済活動とのかかわりを明らかにする環境会計の枠組みを明確化させ、望ましいPSR水準へと行政(国・自治体)が経済主体(企業など)導いていくために行う政策(とそれに伴うコスト)との関係を明らかにする研究に取り掛かる。 そのために、現在行われている政府・自治体環境会計・環境報告の実践モデルの検討を行う。当初の予定で掲げたPSRモデルをはじめ、近年、財務情報と非財務情報とを連携させた報告モデル(統合報告など)も取り上げ、その事例分析を行う。それにかかわるヒアリングも実施したいと考えている。 初年度における基礎研究の成果を海外の学会で報告するとともに、新たな実践モデルに関する研究については、最終年度における海外の学会での報告を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、国内と海外での研究発表のほか、実践モデルに対するヒアリング調査のための旅費を必要とする。そのほか、日本国内および海外の研究者との交流(研究会や専門的知見の提供など)のためにも旅費が必要である。これら旅費に関しては、初年度に行くことができなかった部分について繰越の処置をとっている。 環境会計、政府会計および環境指標等の文献を購入する費用のほか、処理速度の速いパソコンの購入の必要性も認識している。そのため相応の物品費が必要である。 そのほか、海外での研究発表のために必要な参加費や翻訳チェック代金などに対しても必要な予算を手当する。
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