研究課題/領域番号 |
23530570
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
大森 明 横浜国立大学, 国際社会科学研究科, 准教授 (00340141)
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キーワード | メゾ会計 / マクロ会計 / マテリアルフローコスト会計 / PAF法 / 環境予算マトリックス / カーボンコストマトリックス / 環境政策マネジメント |
研究概要 |
本年度は、昨年度行った公会計におけるミクロとマクロの連携の理論研究を踏まえ、公会計において、政府・自治体といった個別経済主体であるミクロを対象とした領域と、政府・自治体の管轄行政区域というマクロを対象とした領域の中間領域、すなわちメゾ領域を対象とした会計の必要性を明らかにした。その成果は「メゾ領域を対象とした公会計の意義-PFIを中心として-」の中にまとめられている。この論文では、実際に展開しているPFIを対象としたメゾ領域全体を会計実体とする公会計モデルの研究を行った。本研究課題との関係でいえば、環境政策マネジメントに資する会計モデルを構築するためには、メゾ領域を対象とした公会計モデルからもたらされる会計情報に基づく政策意思決定が必要であることをまず明らかにする必要があったからである。 つぎに、環境政策マネジメントのためには、経済主体の経済活動と環境問題とを紐づけて各主体の意思決定に資する環境管理会計モデルの構築が必須である。そのため、企業を中心に展開しているマテリアルフローコスト会計(MFCA)に着目した。具体的には、企業が、温室効果ガス削減の意思決定につなげることができる新たなMFCAモデルを提案した。この提案は、"Material Flow Cost Accounting for Carbon Management: Utilization of PAF Approach"と題する研究報告にまとめ、EMAN Conerenceにおいて報告を行った(Best Paper Award受賞)。この研究はミクロ会計に属するが、今後メゾ・マクロ領域への拡張を視野に入れている。 まとめると、公的部門においてメゾ領域を対象とした公会計モデルの構築の必要性が明らかとなり、その具体的モデルとしてMFCAに着目し、MFCAの改善モデルを提案したところまでが2年間の成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の初年度は、基礎的な研究を行ったため、「やや遅れている」という状況であった。しかし本年度は、2つの点で進展があった。まず、公的部門においてミクロとマクロの中間を意味するメゾ領域を対象とした公会計の必要性を明らかにできたことである。本課題が対象とする環境政策は、政府・自治体という個別の政策主体、管轄行政区域における地域の環境状況と同区域における企業等の経済主体という3つの要素を勘案する必要があるため、前述のメゾ領域を対象とした公会計が必要となった。 つぎに、昨年度明らかにしたMFCAをベースとした新たな環境会計モデルは、企業という個別経済主体を対象としているものの、その価値連鎖や地域への拡張を志向している。したがって、来年度が最終年度である本研究課題において、最終的に環境政策マネジメントモデルを提唱する土台が昨年度までにおおむね整備されたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに進捗した2つの点(メゾ公会計と拡張MFCAモデル)を結び付けるため、欧州環境庁(European Environment Agency)が環境政策のベースになる考え方として提唱したDPSIR(Driving-Force- Pressure- State- Impact- Response)フレームワークを用いる。DPSIRフレームワークは、OECDが提唱したDSRフレームワークを発展させたものであり、環境政策は、D、P、S、IおよびRという各要素の関係性を明らかにする形で行われなければならないというものである。 来年度の研究では、政府・自治体の管轄行政区域というメゾ領域を対象とし、環境負荷の経済活動へのインプット・アウトプット関係および環境資源ストックの状況について、各経済主体におけるMFCAモデルを拡張させることを考えている。このモデルでは、いわば地域版の拡張MFCAモデルということができ、当該モデルを政府・自治体および住民が使用することによって、地域の環境政策マネジメントが機能しているかどうか問題発見し、どのように改善すべきかを考え、そして、次期以降の政策改善への反映を図ることができるPDCAサイクルにのせることを提唱したいと考えている。 上記の会計モデルを最終年度に提案することが、本研究課題の目的を果たすことになる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、地域の環境会計モデルを国内と海外の学会等で発表するために旅費を必要とする。また、発表した論文等について積極的に研究会等での交流を行い、モデルの改善に努めるためにもさらなる旅費が必要である。平成24年度の予算余剰は、これら、発表を計画している学会等が次年度に開催されることなどを考慮したためである。 環境会計、政府会計および環境政策等の文献購入費のほか、海外での研究発表のために必要な参加費や翻訳チェック代金についても必要な予算を手当てする。
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