本研究では,環境政策の立案主体である政府・自治体などの公的部門におけるミクロ会計とマクロ会計のリンク論という基礎研究から出発し,①公的部門においてはミクロとマクロの中間を意味するメゾ領域を対象とした公会計(以下,メゾ公会計と記す)が必要であることを明らかにし,また,②環境管理会計手法の一つであるマテリアルフローコスト会計(MFCA)に着目し,その価値連鎖や地域への拡張可能性を検討した。そしてそこでの概念モデルを拡張MFCAモデルと呼称した。 上述の2年間にわたる研究を踏まえ,最終年度においては,メゾ公会計と拡張MFCAモデルを結び付けたメゾ環境会計フレームワークを提示することに努めた。具体的には,環境政策の実務において重要視されている環境指標体系に着目した。本研究では,環境指標体系の一つとしてOECDによるPSR(Pressure-State-Response)モデルを改良したDPSIR(Driving force-Pressure-State-Impact-Responce)モデルに着目した。DPSIRモデルは欧州環境庁により提唱されたものであり,環境政策は,D,P,S,IおよびRという各要素の関係性を明らかにする形で行わな割れるべきとするものである。 他方,公的部門の政策(施策)評価に際しては,住民ニーズに即した政策立案,政策等へのインプット,アウトプット,アウトカム,社会経済問題の変化そして新たな住民ニーズという形で捉えることが重要といわれている。本研究では,こうした政策評価の一般モデルとしてPollit and Bouckaert(2000)により示されたモデルを採用し,上記のDPSIRモデルと関連付けて測定・報告することが,メゾ環境会計のフレームワークとして重要であることを示した。 今後は,拡張MFCAモデルを用いてこのフレームワークの実践可能性を検証したい。
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