研究課題/領域番号 |
23530572
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
李 健泳 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60212685)
|
研究分担者 |
長坂 悦敬 甲南大学, 経営学部, 教授 (00268236)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | BPM / TD-ABC / 時間管理 / IT Control / Management Control / 中小企業 / プロセス管理論 / プロセス構築論 |
研究概要 |
平成23年度の研究では、ビジネス・プロセス管理の側面とIT構築の側面からプロセス管理モデルを構築することで、両面の整合性を常に意識し議論しながら進めた。二つの研究実績の概要は次の通りである。(1)中小企業向けのプロセス管理方法論としての「段階的なプロセス管理論」の研究。(2)中小企業向けのプロセス構築方法論としての「シンプルで容易なITツール開発」の研究。 1.プロセス管理方法論の研究は、中小企業を想定しているため、まず受注から引渡までの基幹部門間のバリューチェーンの管理方法のあり方をモデル化し、さらにバリューチェーンを支援する間接部門の管理方法のあり方をモデルに取り入れる段階的なプロセス管理モデルの構築研究であった。 (1)この研究ではビジネス・プロセスを階層化する方法とプロセスを定型的・非定型的に分けて業績尺度を設けて管理する方法を考案した。(2)特に、プロセス管理モデルでは、プロセスを制御するとともに管理単位として役割を果たすイベントという概念を創案し、イベントの属性の研究に力を注ぎ、一定の成果を上げることができた。 2.プロセス構築方法論の研究は、上記1のプロセス管理を支援するコストのかからないシンプルなITツール構築のあり方に関する研究であった。 (1)プロセス管理モデルでは段階的なプロセス管理構造の構築を目指すため、ITツールの開発においても段階的にシンプルな形でツールを構築する方法論の研究に重点を置いて整合性を保つようにした。(2)ITツールの開発においては管理単位としてのイベントを表現するITツールの複数の実装案が提案され、各案の良し悪しの検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画は、中小企業のためのプロセス管理モデルの構築とそれを支援するITツールの方法論に関する研究であった。当研究についてそれぞれ次のような成果を上げ、予定した目標はほぼ達成できた。 1.平成23年度のプロセス管理論に関する研究では、製造業を想定して企業のビジネス・プロセスを階層化・体系化し、さらに、プロセス階層ごとの業績指標を見える化し、実績を計測しながら、改善していくプロセス管理モデルの構築を行った。 (1)研究実績の概要で述べたように、中小企業を対象とした段階的なプロセス管理モデルの構築研究を行い、予定の目標を達成することができた。(2)特に、プロセス管理モデルでは、プロセスを制御する管理単位としてイベントという概念を創案し、イベントを管理する業績尺度として時間・コスト・キャパシティが測定できるようなモデル構造を作り上げた。このような業績尺度を使う最近の研究動向に「時間主導型活動基準原価(Time Driven Activity Based Costing:TD-ABC)」があり、当研究のモデルがTD-ABCをさらに発展させることができることを論じた論文を学会誌に掲載した。 2.平成23年度のITツールの方法論に関する研究では、プロセス管理モデルを支援するためのITツールのあり方の考察を行った。この研究も次のような成果を上げ、予定の目標はほぼ達成できた。 (1) ITツールの開発においてはプロセス管理論と整合性を持たせることが重要であるため、プロセス管理でのイベントをITツールでシンプルな形で記述し、企業現場で使いやすいことを優先的に考慮したITツール構築案を定めることができた。(2)特に、イベントを表現するITツールの複数の実装案が提案され、一つのイベントのためのITツールが構築できれば、それを複数つなげてプロセスが表現できることを考案した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度の研究課題は、ビジネス・プロセスの階層化・体系化に基づいたプロセス管理論の確立と、プロセス構築のためのプロット・タイプのソフトウェアの開発である。具体的な方策としては次の2点を挙げることができる。 1.プロセス管理論の確立に関する研究では、中小企業の実務家からプロセス管理に関する意見を聞きながら、前年度の研究成果に修正を加え、本研究が目指す実行性の高いビジネス・プロセス管理モデルの確立を目指す。 2.プロセス管理のためのITツールの開発では、中小企業で適用可能なプロット・タイプのソフトウェアの開発で、前年度の研究成果を踏まえてシンプルで効果的なソフトの開発を目指す。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究はビジネス・プロセス管理論の確立とプロット・タイプのソフトウェアの開発である。当研究における前年度未使用額が生じた状況と次年度の主な研究費の使用計画は次のとおりである。 1.前年度の未使用額は予定した研究会が中止になり、次年度に延期されたことにより生じたものであり、次年度の研究会に伴う旅費として使う予定である。。 2.プロセス管理論の確立に関する研究では、中小企業の現場の状況を取り入れるとともに、成果を発表する機会を設ける必要があるために必要な旅費が発生する。 3.プロセス管理のためのITツールの開発では、プロット・タイプのソフトウェアの開発に必要な物品費と関係者への謝金が発生する。
|