研究課題/領域番号 |
23530573
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
山口 直也 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50303110)
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キーワード | 管理会計 / PFI/PPP / 意思決定 |
研究概要 |
平成24年度は、まず、PFI破綻・失敗事例に関する研究論文として、英ロンドン地下鉄のケースを取り上げ、「PFI/PPP事業における意思決定問題-ロンドン地下鉄PPP事業のケース-」として取りまとめ、公表した。 さらに、英国と日本における失敗・破綻事例のうち、需要リスクの顕在化によって失敗・破綻した事例に関する分析をもとに、需要リスクを伴うPFI/PPP事業の意思決定上の問題を整理し、体系化し、日本管理会計学会全国大会及び、日本組織会計学会研究会において、研究報告を行った。 本報告ではまず、定量化できない要素(不確実性)が事業の継続性を大きく左右する可能性があることから、リスクと不確実性を区別したうえで、意思決定にあたっては不確実性をも適切に考慮する必要があると論じた。 その上で、需要リスクは定量化できるとは限らず、「不確実性」としての性格を有する需要リスクが存在し、需要の「不確実性」が高い場合、公的機関・民間事業者の思惑に基づく意思決定のバイアス(偏向)が過大(楽観的)な需要予測を生じさせうると論じた。そして、『需要の「不確実性」』と意思決定のバイアスによる『過大(楽観的)な需要予測』が結び付くと、事業の財務リスクを著しく高めてしまうと主張した。 さらに、事業者の収支計画に対する金融機関のチェックが働かない場合、事業者選定時と契約交渉時における、公的機関による収支計画のチェックが決定的に重要となると主張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PFI破綻・失敗事例に関するケース分析を着実に行うとともに、ケース分析をもとに、需要リスクを伴うPFI事業における意思決定問題の体系化について整理を行い、学会報告を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度である平成25年度は、PFI破綻・失敗事例についての調査・分析及び、国内の自治体等及びコンサルティング会社に対する聞き取り調査を継続するとともに、これまでの調査結果を踏まえて、意思決定要素の抽出と体系化を図っていく。特に、平成24年度に学会報告を行った、需要リスクを伴う事業における意思決定要素の体系化に関する研究成果を論文としてまとめ、公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は文献研究と聞き取り調査をメインとしている。使用する文献のうち、論文や報告書等のうち、電子ジャーナル、他大学等への文献複写依頼、インターネット等を通じて入手するものについては、印刷のための用紙代、文献複写料金、USBメモリ代が必要となる。また、書籍については必要に応じて購入するため、書籍購入代が必要となる。 さらに、聞き取り調査、学会での情報収集、学会・研究会等での研究成果の発表のために旅費が必要である。 なお、次年度使用額が発生しているが、予定していた聞き取り調査の日程を組むことができなかったために発生したものであり、これは今年度の聞き取り調査に充てる予定である。
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