最終年度では、PFI事業及びPFI類似事業について、具体的な事例をもとに意思決定問題について考察を進めてきた。 そして、我が国ではじめて破綻に至ったPFI事業である、福岡市臨海工場余熱利用施設整備事業の意思決定問題についての論文を執筆した。 本事業は、公的資金による一定額の支援があるものの、それが損失補填を目的としておらず、利用者からの収入と一定額の財政支援のみを収益源として運営しなければならない「部分独立採算型事業」であり、需要リスクは全面的に民間事業者に移転されている。このような事業においては、過大(楽観的)な需要予測が過大な収益見積もりを引き起こすとともに、過剰キャパシティ(規模・処理能力・仕様等)とそれに基づく過大な費用見積もりを正当化することで、財務リスクを高め、事業の継続性を危うくしてしまう。つまり、事業者による過大な需要見込みに基づく過大な需要リスクの引き受けが、事業リスクを高めてしまうのである。 本事業が破綻した原因は、発注者である市が、事業者選定段階における各種意思決定によって、過大な需要リスクを抱えた事業提案を誘発するとともに、このような提案を失格とせずに了承してしまったことである。そして、このような破綻原因を引き起こした中核原因を分析し、「二札入札方式という審査方法」、「厳しい期間制約」、「市による収支計画チェックの不履行」という3つの意思決定問題を抽出することができた。これら中核要因はいずれも意思決定プロセスの構築に関する問題であるといえる。 本事業の分析を通じて、需要リスクを伴うPFI事業及びPFI類似事業においては、需要リスクの規模を決定する事業スキームの組成と、需要リスクの適切な管理を促す意思決定プロセスの構築が重要であることが明らかとなった。
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