研究課題/領域番号 |
23530579
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
朴 恩芝 香川大学, 経済学部, 教授 (00345860)
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研究分担者 |
中條 良美 阪南大学, 経営情報学部, 准教授 (00387383)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 環境投資 / コーポレート・ガバナンス |
研究概要 |
初年度は、企業の環境投資の水準とコーポレート・ガバナンスとのかかわりを実証的に分析するための、基礎をつくる。環境関連活動への参加を厳しくモニタリングする利害関係者が多数を占める企業では、環境投資は経営戦略上の重要な要素となろう。逆に、企業間で互いの経営に干渉しないことを暗黙裡に約束しているような状況では、環境問題への意識は希薄なものとなる可能性がある。企業を取り巻く関係者のパワー・バランスは、企業価値の最大化という目標は同じでも、価値自体を誰にどれだけ分配するかに鋭く関わるはずである。 そこで、企業に利害を有する関係者の目的関数を定式化し、最適な環境投資の水準を決めるパラメータを特定する。そのために、エージェンシー理論と企業の実物投資との関係を調査した文献を広く渉猟すると同時に、関連するコーポレート・ガバナンスおよび財務データを収集・加工する作業を徹底した。 次に、設定されたモデルの説明能力をテストするために、環境会計情報のデータベースを作成した。実際、財務会計の情報と異なり、環境コストや経済効果についての情報は、東洋経済新報社のCSRデータベースに開示の有無が示されているのみで、データベースの整備は進んでいない。サンプルとなる環境会計情報は2000年度から2010年度までの11年分で、ここではウェブから入手可能な環境報告書をもとに、CSRデータベースで開示が確認された企業について手作業で情報収集を行った。 23年度末現在、今後の本格的な分析に必要なコーポレート・ガバナンスデータ、財務データおよび環境会計データの収集および加工作業は完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、企業の環境投資の水準とコーポレート・ガバナンスとのかかわりを実証的に分析するための、基礎をつくる作業が中心であった。 そこで、企業に利害を有する関係者の目的関数を定式化し、最適な環境投資の水準を決めるパラメータを特定するために、エージェンシー理論と企業の実物投資との関係を調査した文献を広く渉猟すると同時に、関連するコーポレート・ガバナンスおよび財務データを収集・加工する作業を徹底した。 次に、設定されたモデルの説明能力をテストするために、環境会計情報のデータベースを作成した。サンプルとなる環境会計情報は2000年度から2010年度までの11年分で、ここではウェブから入手可能な環境報告書をもとに、CSRデータベースで開示が確認された企業について手作業で情報収集を行った。 23年度末現在、今後の本格的な分析に必要なコーポレート・ガバナンスデータ、財務データおよび環境会計データの収集および加工作業は完了している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、環境関連活動に着手する要因としてのコーポレート・ガバナンスの役割について、集積された環境会計のデータをもとに実証分析を行う。ガバナンスの指標としては、日経Cgesに収録されたデータを用いる。この際、企業の環境投資に肯定的なガバナンスの構造を特定するため、主成分分析の手法などに依拠しながら、複数の指標を組み合わせた独自のインデックスを考案する。この分析から、ガバナンス構造を与件としたときに、あるべき環境投資の水準が導かれる。このとき、現実のデータがこの水準からどれだけ乖離するかについても、検討を加える余地がある。 それを考えるためには、環境投資と他の潜在的な投資機会とで、投資の収益性がどれだけ異なるかを比較する必要がある。環境会計情報には、環境コストだけでなく、その支出に伴う経済効果の数値が含まれている。費用と効果を短期・長期の視点で照らし合わせることで、環境投資の効率をさまざまな角度から具体的に測定する。ただし、設備の増設など効果の確認が比較的容易な投資と異なり、環境投資が企業の収益性に結びつく経路はかなり複雑であることが予想される。その場合は、データ・マイニングなどの手法を用いることで、可能な限り客観的な形で環境報告書に記載された定性情報にまで立ち入って収益性の判断を行う。 さらに、ガバナンス構造と環境投資の水準が株価に与える複合的な影響を明らかにする。その方法は、ガバナンスの内生的な影響を排除した上で、環境投資の大きさは株価の説明要素となりうるかを実証する。それと同時に、ガバナンス構造と環境会計情報をもとに株式ポートフォリオを作成し投資収益を測定することで、SRIに代表されるファンドの運用に対して、何らかのインプリケーションを示すことを目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
[1] 設備備品費-新たに購入が必要なデータは、CSRデータベース、日経Cges、東洋経済株価CD-ROM、IBES業績予想データにまとめられる。また、モデルの生成・実証にはMathematicaとSTATAも欠かせない。[2] 消耗品費-環境会計とコーポレート・ガバナンスに関する書籍の購入に、その多くを充てる。[3] 旅費-研究拠点は香川大学に置かれるが、研究分担者である阪南大学の中條と共同研究を進めるためには旅費が不可欠となる。また、すでに、日本国内および海外の会計学会での研究成果発表を予定しており、同学会に参加するための海外旅費を計上している。[4] 謝金-環境会計データなどの追加収集および加工作業のために、研究補助者の協力を予定している。
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