研究課題
本研究の目的は、日本の会計システムがいかに諸外国の影響を受けつつ独自に発展してきたのかを、会計諸環境の動的側面に目を向けながら再整理し、会計基準のコンバージェンスに関するインプリケーションを得ることにある。本年度の研究成果は、おおよそ次の通りであった。 まず、諸外国の会計システムが日本の会計システムにいかなる影響を与えてきたのかを検討した。これまで日本は、保守的経理を選好すること、配当可能利益および課税所得の算定に重きを置くことなどを根拠にドイツ型会計システムとの類似性が指摘されてきたが、より広く財務情報に注目する場合には、むしろアングロ・アメリカ型会計システムとの類似性を指摘することができる。 また、企業活動のグローバル化が進めば進むほど、世界の金融・経営・会計システムがアングロ・アメリカンモデルに向けてコンバージェンスされると指摘されることがあるが、現実はより複雑でより多様であり、企業活動のグローバル化(コンバージェンス)と各国実務の多様性(ダイバージェンス)は両立しうることを明らかにした。 さらに、日本がローカルな視点を重視し、財務報告のコンバージェンスをより慎重に進めてきたのは、会計制度・周辺制度が整備されればされるほど、会計制度とその周辺制度との擦り合わせが必要となるためであることを指摘した。同時に、近年、日本国内の会計および周辺制度の機能分化――金融商品取引法と会社法、財務報告と課税所得計算、上場企業と中小企業の会計の分化――が促進され議論されるようになったのは、グローバルな要請に機動的に応えるためであったことを明らかにした。 このような会計制度の多様性に関する研究は、会計基準のコンバージェンス(de jure convergence)だけでなく、会計実務のコンバージェンス(de facto convergence)を達成する上できわめて重要である。
1: 当初の計画以上に進展している
本年度は、雑誌論文5編(ディスカッションペーパー、報告書を除く)を公表し、学会報告を6回行うことができたため。
次年度以降は、本年度の知見を踏まえて、コンテクスチュアル・フレームワークの構築を目指す。同時に、ディファクト・コンバージェンスの可能性を探るために、会計プロフェッションを対象にして、日本固有のジャッジメントを実験会計学の手法を用いて検証する。そのために、リサーチ・インストラメントを作成し、パイロットテストを経て、次年度中にアンケートを実施する予定である。研究成果は、内外の学会で報告する予定である。
当初の予定通りに使用する。
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