研究課題/領域番号 |
23530582
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
角ケ谷 典幸 九州大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80267921)
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キーワード | 国際情報交換オーストラリア |
研究概要 |
本研究の目的は、日本の会計システムがいかに諸外国の影響を受けつつ独自に発展してきたのかを、会計諸環境の動的側面に目を向けながら再整理し、財務報告のコンバージェンスに関するインプリケーションを得ることにある。本年度の研究成果は、おおよそ次の通りであった。 まず、これまでの研究成果を踏まえて、日本がローカルな視点を重視し、財務報告のコンバージェンスをより慎重に進めてきたのは、会計制度および周辺制度が整備されればされるほど、会計制度とその周辺制度との擦り合わせが必要となるためであることを確認した。あわせて、近年、日本国内の会計および周辺制度の機能分化―たとえば、金融商品取引法と会社法、財務報告と課税所得計算、上場企業と中小企業の会計の分化―が促進され議論されるようになったのは、グローバルな要請に機動的に応えるためであったことを確認した。 次に、日本の会計制度の固有性は、日本の伝統的な会計制度や周辺制度と国際財務報告基準(IFRS)やアングロ・アメリカンモデルとの擦り合わせから創出されていることを明らかにした。たとえば、日本の会計制度における純利益と包括利益の併存、アングロ・アメリカンモデルにおける財務・雇用・ガバナンスシステムと日本固有のメインバンク制、長期安定的雇用、インサイダー・コントロールモデルとの併存(つまり、ハイブリッドモデル)は、異なるシステムを擦り合わせた結果として捉えることができる。 このような会計制度の多様性に関する研究は、世界共通のビジネス言語としての会計が、実は各国の歴史的、法的、企業組織的、経済的環境のなかに埋め込まれていること、そしてそのようなコンテクストは財務報告のコンバージェンスにあたり無視し得ないことを示す上できわめて重要であると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、雑誌論文等4編(プロシーディングや報告書は除く)を公表し、学会報告を6回行うことができたため。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は本研究課題の最終年度であるため、これまでの知見を踏まえて、コンテクスチュアル・フレームワークの構築・確立を目指す。具体的には、日本会計研究学会、ヨーロッパ会計学会、アジア会計学会をはじめ、内外最高峰の学会で報告する予定である。同時に、現在、国際学術誌に投稿中の論文を改訂し、掲載されるように努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は主に成果報告に使用する予定である。具体的には、ヨーロッパ会計学会(5月6-8日、フランス・パリ、報告確定)、APIRA(7月26-28日、神戸、報告確定)、およびアジア会計学会(10月27-30日、マレーシア・ペナンン)などで報告する予定であり、旅費および学会参加費に使用する予定である。また、国際学術誌に投稿予定であり、関連書籍の購入および英文校正のために使用する予定である。
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