研究課題
本研究の目的は、日本の会計システムがいかに諸外国の影響を受けつつ独自に発展してきたのかを、会計諸環境に目を向けながら再整理し、財務報告のコンバージェンスに関するインプリケーションを得ることにあった。本年度はリース会計基準および公正価値会計を題材にして、国際財務報告基準(IFRS)の動向を分析した。また、欧米諸国の先行研究と対比させながら、日本の会計専門家の判断力の特性を分析した。企業活動のグローバル化が進めば進むほど、アングロ・アメリカンモデルに向けてコンバージェンスされると指摘されることがあるが、現実は複雑であり、企業活動のグローバル化(コンバージェンス)と各国実務の多様性(ダイバージェンス)は両立しうる。日本が財務報告のコンバージェンスをより慎重に進めてきたのは、会計制度および周辺制度が整備されればされるほど、会計制度とその周辺制度との擦り合わせが必要となるためである。同時に、近年、日本国内の会計および周辺制度の機能分化――金融商品取引法と会社法、財務報告と課税所得計算、上場企業と中小企業の会計の分化――が促進され議論されるようになったのは、グローバルな要請に機動的に応えるためである。日本の固有性は、日本の伝統的な会計制度や周辺制度とIFRSやアングロ・アメリカンモデルとの擦り合わせから創出されている。たとえば、日本における純利益と包括利益の併存、アングロ・アメリカンモデルにおける財務・雇用・ガバナンスシステムと日本固有のメインバンク制、長期安定的雇用、インサイダー・コントロールモデルとの併存は、異なるシステムを擦り合わせた結果として捉えられる。本研究成果は、各国の会計制度は各国の歴史的、法的、企業組織的、経済的環境のなかに埋め込まれていること、そしてそのようなコンテクストは財務報告のコンバージェンスにあたり無視し得ないことを示す上できわめて重要である。
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