研究課題
本研究は、九州大学・慶應義塾・福島大学各図書館・センター所蔵の炭鉱関係資料を利用し、鉄道・海運等の動力供給源であった日本の主要炭鉱会社を重点的に選別し、各社の予算統制等の利益管理ツールならびに各種報告制度とそれを通じた統制制度に関する情報を抽出し、データベース分析を行うことによって、戦前・戦後を通じた日本の基幹産業における会計実務というコンテクストから、予算統制の歴史的展開に関する議論に対して一定の貢献を果たすことを目的としている。平成23年度は北海道炭礦汽船を調査分析対象とし、同社の利益管理ツールならびに報告制度と統制制度に関する時系列データベースを作成した。 分析の結果、次の諸事項が明らかとなった。北海道炭礦汽船は、1949年、国策による石炭増産要請に応じるため、また戦中に生じた乱掘と設備の荒廃に対処するため、新炭鉱の開発・現炭鉱の拡張整備・増産に直結する諸設備の近代化を図った。同事業拡張計画の遂行には持株会社整理委員会による承認が必要であったが、このために同社は詳細な資本予算および事業予算計画を立案し、提出した。増資や米国対日援助見返資金の利用に加えて主要な資金源となったのは市中借入であったが、資産再評価を行ってもなお貸借対照表の信用度指標に問題があり、これを改善するために、財閥解体のために同委員会に委譲していた同社保有株式の処分代金を事前交付するよう合わせて要請した。 資産再評価による貸借対照表指標の改善はこれまでの研究でも明らかにされているところであるが、北海道炭礦汽船のケースはそれ以外の事例が存在したことを示している。また、同処分代金の交付には「持株会社の整理の遂行のため」という条件が付されていたことからすると、同社の事業拡張計画と当該趣旨との整合性が問われよう。以上の結果をさらに検討拡充し、今後研究報告のかたちにまとめる予定である。
3: やや遅れている
当初の計画では、北海道炭礦汽船に加えて、住友石炭鉱業も分析対象とすることを予定していたが、同社のデータベースについては平成23年度末現在作成途中にあるからである。
今後は、住友石炭鉱業のデータベースの完成を急ぐとともに、平成24年度の計画で予定されている三菱鉱業および三井鉱山につき、同様のデータベースを作成することを企図する。
平成24年度の計画で予定されている三菱鉱業および三井鉱山につき、平成23年度で作成したものと同様のデータベースを作成する。したがって、平成23年度当初予算額と同様の執行額を見込む。
すべて 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Accounting, Auditing and Accountability Journal
巻: Vol. 25, No.3 ページ: 416 - 451
10.1108/09513571211209590
Accounting History
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