本研究は,国際的な会計のコンバージェンスを目指す米国財務会計基準審議会(FASB)と国際会計基準審議会(IASB)のそれぞれの基準設定行動に着目し,両審議会において会計基準の設定を決定する要因は何であるのか,それは両審議会で異なるのか,異なる場合その理由は何であるのか,を明らかにすることを目的としている.かかる目的を遂行するために,本研究では,「会計基準設定機関はその組織の存続に関する危機認識が当該機関の行動を決定する」との仮説を設けて,かかる仮設の検証を試みている. 平成24年度までに分析視角の精緻化を試み,いくつかの検証を行った.それらを受けて,平成25年度には以下の2つに関する研究を実施した.まず,①FASBとIASBの2000年代後半におけるネットワーク構造分析をとおしての基準設定行動の研究である.この研究では,両審議会の基準設定活動がそれぞれの組織構造,戦略,そして環境要因によって決定されているのかを検証している.その検証に際し,両審議会の主要4組織を対象にしたものと,それら以外の組織も包括した大規模なデータを対象にしたものの2つの検証を行っている.いずれの検証においても,上記仮説が概ね妥当することが明らかになった.前者の研究の一部は,学術雑誌『会計プログレス』第14号に掲載された.また後者については,2013年5月にParisで開催されたEAA等で報告した. 次に,②IASBの2001年から2010年までの10年間を対象に,当該機関の基準設定行動の研究を実施した.この研究では,IASBの各タームにおける基準設定行動の違いが,環境要因および組織構造の違いによるものであるかを検証した.その検証においても上記仮説が概ね妥当することが明らかになった.この研究成果の一部は,2014年9月に開催される日本会計研究学会全国大会で報告する予定である.
|