研究概要 |
本研究では,企業間比較を可能にする環境パフォーマンス評価法を開発する。この方法では,環境報告書に開示されている,複数の環境負荷物質の排出量を統合評価するため,JEPIX (Environmental Policy Priorities Index for Japan:環境政策優先度指数)を改訂し用いる。JEPIXは,目標までの距離(Distance to Target)概念に基づき,各環境負荷物質に対して,その物質の環境政策に基づく目標排出量と実際の排出量との乖離を評価し,単位排出量あたりの環境負荷を示すエコファクタを与える。これにより,複数の環境負荷物質量を単一の環境負荷量に変換できる。排出量を開示していない企業に対しては,非公開排出量ペナルティ法による開示インセンティブを与え公平な企業間の比較を行うことを基本とする。 過年度までに,最新の排出量インベントリデータと法規制に基づくJEPIX2010を算定し,JEPIX2010と非公開排出量ペナルティ法を組み込んだパソコン版の評価ツールを開発している。これにより,地球温暖化物質,オゾン層破壊物質,COD, BOD,全燐,全窒素,廃棄物,SPM, ダイオキシン類,揮発性有機化合物に対する排出量評価が可能になった。本年度は,開発した集計ツール用いて,環境報告書に開示されている実際の企業データを用いて,自動車業界および精密機器業界に対して環境パフォーマンス評価を行った。これにより,企業間での環境パフォーマンス評価が可能であることが確認された。環境負荷物質排出量に基づく企業評価は,財務的評価と組み合わせることで,投資家にとっても有益な情報となり,企業間の競争促進による環境負荷低減が期待できる。本年度は,提案方法の応用として,収益性評価を考慮した環境ポートフォリオの実現可能性についての検討を行った。
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