研究課題/領域番号 |
23530596
|
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
渡辺 岳夫 中央大学, 商学部, 准教授 (00294398)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | アメーバ経営システム / 自己効力感 / チーム効力感 / 自律的動機づけ |
研究概要 |
本研究者は,a)アメーバ経営システム(AMS)の諸特性,b)各種心理概念,c)行動的効果,およびd)組織環境に関する因果モデルを暫定的に完成させている。そして,調査協力企業のダイヤモンド電機(株)(D社)の従業員を対象として,同社がAMSを導入する以前に,当該因果モデルの構成変数(aを除く)に関するデータを質問票調査によって得ている。 以上を踏まえ,本年度は第一に,AMSが及ぼす心理的・行動的効果に関する因果モデルについて,文献レヴューとD社に対するヒアリング調査に基づき,継続的な改善を行った。より具体的には,自己効力感,チーム効力感,自律的動機づけといった心理的構成概念,およびAMS等について徹底的にレヴューし,因果モデルを強化した。また,D社のAMS導入責任者や運営責任者,現場の小集団のリーダーなどに対して長時間に及ぶヒアリング調査を行い,文献からはうかがい知ることのできない知見を得て,それを因果モデルに反映させることができた。 第二に,AMS導入後の時点において,因果モデルの構成変数に関する二度目のデータ収集をD社において行った。収集のタイミングは,AMSの導入効果をより高めるために行われた,コンサルティング会社による現場の従業員に対するAMS浸透のための働きかけの前とした。次年度には,そのコンサルティング会社による諸施策が行われてから数カ月経た時点で,再度D社の従業員からデータを収集する予定である。以上により,AMS導入以前,導入後,および導入後のAMS浸透のための諸施策実施後の時系列的な比較分析が可能になる。これにより,モデルの各変数や変数間関係の推移を明確にし,AMSが心理的・行動的効果を及ぼしているのかを,実証的に明らかにすることができる。このような長期的・時系列的なAMSの効果に関する実証分析は本邦初であり,その意味で学術的に高い意義があるものと思量する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の内容は,相互に密接に関連しつつも,次の2つに大別することができる。すなわち,第一にAMSの諸特性とその効果に関する因果モデルの構築と実証であり(以下,因果モデル研究),第二に当該因果モデルの構成変数ならびに変数間関係の時系列的な推移に関する分析である(以下,時系列分析)。 本年度は,文献レヴューやヒアリング調査によって,因果モデルの構築を行い,それを完成させることができた。これは,適切な文献のレヴューを実施することができたことと,調査協力企業のヒアリング調査に対する多大なるご協力によるものである。複数回の長時間に及ぶヒアリングを行うことができなければ,因果モデル研究において最も重要な「モデルの構築」は円滑に遂行できなかったであろう。 次に,同じく調査協力企業のご協力により,時系列分析もおおむね順調に進展している。本年度は,構築した因果モデルの構成変数についてのデータを,調査協力企業がAMSを導入した後の段階において収集することができた。回収率は非常に高く,ほぼ100%であり,それは調査協力企業の経営陣・管理者各位が従業員に回答を促していただいたことによるところ大である。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度も,引き続き調査協力企業であるダイヤモンド電機にご依頼し,同社の従業員対して継続的にヒアリング調査を実施し,因果モデルの時系列分析の結果を解釈するための,AMS浸透諸施策の実施状況について定性的データを得る予定である。 加えて,時系列分析のために必要なデータも収集する予定である。すなわち,コンサルティング会社のAMS浸透諸施策実施後の,因果モデルの構成変数に関するデータを得るために,調査協力企業に対してアンケート調査を実施させていただくようご依頼する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は,震災の影響により研究費執行が可能になる時期が遅れ,そのため,わずかな金額であるが執行残額(繰越金)が生じた。しかし,これによる研究計画の遅延はほとんど生じておらず,次年度の研究費使用計画に変更はない。 次年度においては,因果モデルに関する文献レヴューの継続のための図書購入,調査協力企業の経営管理者に対するヒアリング調査のための大阪出張,同社の現場の従業員に対するヒアリング調査のための鳥取出張,因果モデルの構成変数に関するデータ収集のためのアンケート調査,および同アンケート調査に関わる調査協力のための謝礼に対する支出が,主たる研究費の使用用途であり,当初の研究計画どおりである。
|