本研究の内容は,相互に密接に関連しつつも,次の2つに大別することができる。すなわち,第一にアメーバ経営システム(以下,AMSと略称)の諸特性とその効果に関する因果モデルの構築と実証であり(以下,「因果モデル研究」),第二に,当該因果モデルの構成変数および変数間関係の時系列的な推移に関する分析である(以下,「時系列分析」)。 因果モデル研究において最も重要といえるモデルの構築は,すでに一昨年度において完成している。本年度は,昨年に引き続き,調査協力企業であるダイヤモンド電機㈱(以下,D社)からアンケート調査により入手したデータに基づき,当該モデルを共分散構造分析によって検証した。これについては,昨年と概ね同様の結果が得られた。すなわち,AMSの情報や運用の特性が,組織成員の自己効力感,チーム効力感,およし自律的動機づけを媒介し,組織内のインタラクションやパフォーマンスに正の影響を及ぼしていた。 時系列分析は,導入後1年経過時点,2年経過時点,および3年経過時点における,因果モデルを構成する各変数を対象に実施した。その結果,特に,昨年度にD社が実施したコンサルティング会社によるAMSに関する研修などの諸施策の影響から,導入後1年経過時点と比べて,導入後2年経過時点におけるAMSの諸特性に対する正の認知度が有意に高まり,組織内インタラクションやパフォーマンスが促進されたことが分かった。しかし,事業部門によっては,そのような傾向が確認されないところもあり,事業特性の調整効果の存在も示唆された。
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