研究課題/領域番号 |
23530597
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
濱本 明 日本大学, 商学部, 准教授 (00366551)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 継続企業の前提 / ゴーイング・コンサーン / 倒産 / 債務超過 |
研究概要 |
ゴーイング・コンサーン情報とは、継続企業の前提に重要な疑義を抱かせる事象又は状況が存在する場合における、財務諸表への注記開示、そして監査人による継続企業の前提に重要な疑義が認められる事項が財務諸表等に適切に記載されているか否かについて検討及び当該重要な疑義に関する事項について監査報告書等への追記情報である。ここで、継続企業の前提が成立していないことが一定の事実により明らかな場合には,継続企業を前提として財務諸表を作成することは不適切であると判断しなければならない。 この「一定の事実」とは、破産手続など清算型法的倒産処理手続の申立て等が該当するとされており、再生型法的倒産処理手続の申立てについては、制度上は継続企業前提の不成立とは考えられていない。しかし、清算型であっても再生型であっても法的倒産処理手続の申立ては、利害関係者に与える被害は甚大となる可能性が大きく、この点において財務情報の利用者と開示制度の期待ギャップが存在すると考えられる。 また、ゴーイング・コンサーンの前提に重要な疑義を抱かせる状況として、例えば債務超過が挙げられる。この債務超過の判定は、実務上(連結)貸借対照表の資産簿価を負債簿価が上回る状況によって判定されている。しかし、債務超過であっても、支払能力を有し事業を継続することが不可能とは限らない。すなわち、事業活動の前提である支払能力は資金が足りているか否かによるものであり、単純に資産と負債の大小関係で判定することに問題がある。また、債務超過に関連して、破産手続の開始原因としても債務超過を判定するが、同様の問題があると考えられる。 そこで、ゴーイング・コンサーン情報の開示、法的倒産処理手続の開始原因について、諸外国の制度と比較しつつ、その関係を明らかにし、ゴーイング・コンサーン情報の企業倒産に関する情報としての有用性について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゴーイング・コンサーン情報開示の観点から、他の会計基準の動向における問題点が明らかになった。 例えば、「四半期財務諸表に関する会計基準」の平成23年改正は、四半期報告を簡素化することを趣旨とするものであるが、四半期財務諸表の作成者の便宜に偏向しており、四半期財務諸表の利用者にとって必要な情報が不足する問題があり、ゴーイング・コンサーン情報の精度が低下するおそれもある。そこで、四半期財務諸表の利用者は、企業のゴーイング・コンサーン能力判定のために、不足する情報を自ら作成する必要がある。この点につき、キャッシュ・フロー情報は利用者側である程度は作成可能であり、かつ利用者側が四半期キャッシュ・フロー計算書を作成・分析する場合に必要な情報が手当てされている。しかし、四半期損益情報は、これを四半期財務諸表の利用者側が推計した場合、歪んだ情報によって誤解するおそれがある。そこで、四半期財務諸表作成者の負担にならない範囲で情報不足を補うためには、例えば、重要な在外子会社が存在する場合に外貨ベースでの四半期情報や関連する為替相場の注記開示を行うこと等が少なくとも必要があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
企業倒産は、企業倒産の原因となる事象が存在し、これを原因として法的倒産処理手続が申し立てられることによって生ずる。企業倒産の原因となる事象については、ファイナンス理論等に関する研究の蓄積があり、法的倒産処理手続開始原因には倒産法に関する研究及び判例の蓄積がある。 本研究では、これらの研究成果等を援用しつつ、会計理論の見地から利害関係者への情報提供のあり方を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記研究の方針に基づいて、文献研究や学会参加等により情報収集を行うために研究費を使用することを計画している。 今年度は、文献等の資料収集を優先したために繰越金が生じたが、次年度は資料収集のための出張も併せて行う計画である。
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