ゴーイング・コンサーン情報が、実際に企業の継続能力を反映しているか否かについて、特にゴーイング・コンサーン情報に関する制度の規定から、その問題点を明らかにした。 この点につき、2011年12月22日に監査基準委員会報告書第570号「継続企業」(以下、新監査実務指針第570号)が公表され、すでに2012年4月1日以後開始する事業年度に係る監査(及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査)から適用されているが、この改正は、IAASBによるクラリティ・プロジェクトを受けて行われた短期間における大量の監査実務指針改正の中で設定・公表されたものである。 そのため、クラリティ版ISA570号「継続企業」の内容が、我が国の制度にマッチするか、基準内外での理論的整合性は確保されているかについて、十分に検討されないまま我が国実務指針に導入され、規定化されたおそれがある。 特に、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるか否かについて「流動負債が流動資産を超過している状態」を判定基準とすることは、支払不能テストを実施してきた英米とは異なり我が国の制度においては未定着である点、ドイツ及び米国の監査基準と比して、経営者及び監査人の評価期間との関係において理論的整合性が十分に確保されていない問題がある。そのため、当該判定基準に代えて支払能力の有無を検討する新たな判定基準を規定することが望ましいと考えられる。
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