我が国の医療現場において、病院の予算管理上、医療安全対策にどれだけの経済的資源が投入されているか、国内外の学会を問わず、予防対策として事前に投入される医療安全管理活動にかかるコスト(予防的投入コスト)を把握することの重要性については衆目が一致するものの、データの入手の困難性からか、とりわけ国全体から個別の医療機関に至るまで、医療安全管理活動への経済的資源の投入の規模・割合の詳細については、いまだほとんど明らかにされていないといってよいであろう。 平成25年度までは、患者の個人情報保護や病院の経営上の機密の観点から、病院現場の協力によるデータ収集に関して、通常の研究と比較してかなり時間と労力を費やすため、貴重な現場での関連データ収集に努めるとともに、具体的な研究成果として、例えば、DPC環境下における循環器領域での医療材料コストを捉える事例研究を行い、当初の研究実施計画に沿って、その結果を国際研究学会(開催地:イギリス・エジンバラ)で発表を行った。さらにはその他の関連テーマでの論文執筆、出版などの研究活動を行ってきた。 最終年度の平成26年度においては、例えば、病院全体の診療の中で、診療リスクや診療コスト等の観点から、その多くを占めるとみられる心臓カテーテル治療を採り上げつつ、当該治療にかかる医療安全管理のための予防的投入コストの金額の推計、及び、その心臓カテーテル治療にかかる予防コストの金額の診療リスク等と照らしての妥当性の検討について事例研究を行い、その結果を国際研究学会(開催地:ブラジル・リオ=デ=ジャネイロ)で発表を行った。さらにその他の関連テーマでも複数の論文を執筆し、国内学会でも発表を行うなどの研究活動を行ってきた。国内外において、医療安全管理にかかる費用の規模等の詳細については、いまだ明らかになっているとはいえない状況において、本研究の意義は大きいと考えられる。
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