研究課題/領域番号 |
23530604
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
松本 敏史 同志社大学, 商学部, 教授 (90140095)
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研究分担者 |
徳賀 芳弘 京都大学, 経営学研究科, 教授 (70163970)
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キーワード | 国際会計基準 / FASB / 銀行会計 / 金融商品 / 公正価値会計 / 会計の基本機能 |
研究概要 |
国際会計基準審議会(IASB)と米国財務会計基準審議会(FASB)が実施している金融商品会計基準の改訂作業は最終段階にある。リーマンショックにより、当初の全面公正価値会計導入の目論見は多少後退したものの、金融商品会計基準は,金融資産と金融負債を公正価値で測定し,原則としてその変動差額を純利益に算入することを求めている。一方、日本の金融商品会計基準は評価差額の損益算入を売買目的有価証券の評価差額に限定している。今後、我が国の金融商品会計基準もコンバージェンスの作業を通じてIFRSやSFASと同様に公正価値評価の色彩を強めていくものと予測されるが、公正価値会計の導入によって最も大きな影響を受けるのが我が国の銀行業界である。本研究では公正価値会計が導入された場合,外部の環境変化(株価水準や公定歩合の変動等)が銀行の経営にいかなる影響を与えるのか、この点をBIS規制との関係でシミュレートしていくことを重要な目的の一つとしている。そのための作業として,24年度もIASBとFASBの基準改訂作業を追尾し、その内容を分析した。それによりIASBとFASBが構想している公正価値会計の構造を浮き彫りにしながら,両審議会の到達目標を分析した。次に,銀行会計への公正価値会計の導入を研究対象とする場合,重要なテーマとなるのが,BIS規制を通じた公正価値測定のミクロ経済(個々の銀行経営),マクロ経済に与える影響である。この点についてはBIS規制(バーゼルIII)の概要と,公正価値測定が実体経済の景気循環を増幅する効果に関する分析を継続して行った。さらに銀行も株式会社であることから納税と株主に対する配当を行う必要がある。その基準値となる分配可能利益の計算も会計が持つ重要な基本機能の1つである。これに対して公正価値会計がいかなる問題を引き起こすのか、本年度はこの点の分析にも注力した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の目標としていた(1)公正価値会計に関連するプロジェクトの整理、(2)日本の金融機関に与える公正価値会計の影響、(3)公正価値会計の導入に対する銀行の聞き取り調査のうち(1)(2)についてはある程度の進展が見られたが、(3)については日本の会計基準の改訂が進んでいないため実施していない。
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今後の研究の推進方策 |
銀行取引の標準的な会計処理方法を確認し、わが国の銀行の特殊性(政策株式や国債の総資産に占める割合が高く,コア預金が総資本に占める割合も高い点)がBIS規制のもとで数値にどのような影響を与えるのかを分析し、各種のマクロ経済指標の変動が銀行行動に与える影響をシミュレートできるようにしたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
文献の購入,研究会の開催,専門家の招聘による知見の獲得
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