研究第3年目の本年は、日本基準と国際会計基準との会計処理の相違を調整した場合に、日本基準下の会計数値は国際会計基準下の会計数値と同質の情報内容を提供するのかという問題について解明を試みた。例をのれんの会計処理にとった。日本基準下ではのれんは償却することになっているが、国際会計基準ではのれんは償却しない。そこで、米国企業ののれん(国際会計基準と同様の処理をしている)と日本企業ののれん(償却した分を足し戻したのれん)を、利益や株価との関連性について調査し、分析結果を比較した。 分析結果は、当期ののれんが大きい企業ほどその後の利益率(のれんそのものが利益率に与える影響は排除している)が低くなることが、日米に共通して言えるということを明らかにした。しかし米国では、当期ののれんが大きい企業ほどその後の株価は大きく下落するのに対して、日本では下落の大きさはごくわずかであることも明らかになった。この日米間の差異は、日本のM&A実務の特殊性(統合シナジーを出すよりも両者の融和が経営者の最大の関心事であり、M&Aが企業価値にどう影響するのかという視点が欠けていて企業価値の見積りが甘い等)に起因する可能性がある。 上記の結果から言えることは、日本基準は国際会計基準とコンバージェンスしたとして、提供される会計情報はすべてが同質になるというわけではない。同一の会計処理に基づく財務諸表であっても、その国独自の経営形態から生じる差異は情報の質に影響を与えないではおかないであろうということがわかる。 本年度の研究成果は、2014年9月に横浜国立大学で開催される日本会計研究学会第73回大会で「のれんと将来業績および将来株価の関連性―日米比較を中心に」というテーマで報告予定である(2014年5月現在、エントリー済み)。
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