研究課題/領域番号 |
23530607
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
富田 知嗣 関西大学, 会計研究科, 教授 (60264743)
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キーワード | 財務会計 / 投資家の意思決定 / 情報メディア / SNS |
研究概要 |
会計情報は,株式投資において,重要な情報として位置づけられているが,投資家にとって,会計情報はそのための唯一の重要情報というわけではなく,会計情報以外の多様な情報も利用されている。また,その情報収集において,ICTの発展と普及により,様々な情報メディア,情報端末が存在する。そこで,会計情報が株式投資におけるその他の各種情報との関係において,どの程度の重要性をもち,どのような役割を担っているのかを調査・研究することを,本研究の目的として,とくに個人投資家の株式投資意思決定過程に焦点を当て,投資スタイルだけではなく,個人投資家の投資意思決定要因に関する調査と仮説としての意思決定モデルの構築を試みている。今年度は,主に,昨年度の遅れの回復とともに以下の三点を実施した。 まず,前年度に引き続き,予備調査として,証券アナリストおよび当該分野の研究者等に,意思決定における参照情報や利用メディアの抽出と,その際に生じる可能性のあるバイアスに関するインタビュー調査を行った。 次に,SNS利用が日本より先行している米国に赴き,株式投資におけるSNS普及の影響(利便性,リスク,行動変化等)について,インタビュー調査を実施した。また,日米比較を実施する際の協力依頼を行った。 最後に,日本のみであるが,学生と社会人に対し街頭を中心にアンケート調査(約500件)を実施した。内容は,個人属性,モバイル端末の利用,利用情報メディアおよびリソース,投資戦略,各種情報の相対的重要性比較である。結果として,個人属性や投資戦略等によって,重要となる情報が異なっていることが明確になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れの原因は,昨年度に生じた遅れが,今年度に繰り越された結果である。そして,昨年度生じた遅れの回復に努めたが,当初の予定と比較すると,完全には遅れを解消できなかった。 遅れ解消の内容であるが,昨年度生じたアンケート実施の問題を解決(一部回避)し,それによって昨年度の遅れを概ね解消し,予定していた街頭アンケートの実施も終了し,データ入力と俯瞰的な分析まで終了しているが,より詳細な分析部分が残ってしまった。この未解消の遅れは,次年度で完全に解消される。
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今後の研究の推進方策 |
第1回めのアンケート結果のより詳細な分析を行い,個人の属性や投資戦略との関係から,会計情報の相対的重要性を含め参照情報のパターン化を,より明確にする。 また,第2回めの本調査として,第1回めの街頭中心のアンケート(「学生」および「社会人一般」)に替え,Webベースでの社会人中心のアンケート調査を実施する予定である。内容は,利用メディアおよびリソースの主観的重要性と順序,会計情報が利用される場合,そのタイミングや位置づけ等を調査し,分析を行う。 さらに,SNS(とくにTwitterやBlog)による情報の情報内容の収集・分析を行い,投資家の行動結果としての株価との関連性についても分析する。 結果として,情報の流れや会計情報の位置づけを明らかにし,投資家の意思決定モデルを構築する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「現在までの達成度」で記載した「やや遅れている」ことの理由により,次年度への繰越金が670,339円発生している。すなわち,昨年度に生じた遅れが,今年度に繰り越され,その遅れの回復に努めたが,当初の予定と較べ,完全には解消できなかったためである。 アンケートの実施結果のデータの保全・保管費(消耗品費,謝金),およびより詳細な分析のための情報処理費(コンピュータ)を予定している。 また,Webベースでのアンケートの実施のためには,作成費(謝金),実施費(通信費,謝金,旅費(国内および海外への出張旅費)),を予定している。 さらには,SNSと株価との関連性分析のために,データの利用料およびデータの処理費(消耗品費,謝金,図書資料費等)を予定している。
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