研究課題
株式投資における会計情報の相対的重要性について,前年度までに社会人と大学生を対象としたアンケート調査を実施している。今年度は,そのデータに基づき,その分析と検討を行った。また,その過程で,インタビュー調査を行い,分析結果の整合性や妥当性について,追加検証を行った。分析においては,個人属性(性別や学歴・職歴,株式投資経験,リスク許容度,情報環境等),投資スタンス,投資スタイル,情報収集におけるメディアやリソース等の相違による各種情報(「会計情報」「会社情報」「株価情報」「評判」「他者意見(専門家・クチコミ)」)の相対的な重要性の相違,および,それら相互の影響を,浮き彫りにすることに焦点を当てている。結果としては,上記の個人属性,投資スタイル,投資スタンス等により,各種情報への相対的重要性(とりわけ会計情報の位置づけ)の明確な相違を確認しており,これらの結果から,以下の関係性が明らかにされている。情報収集に対する投資家の選好は,その際のメディアの選択に影響する。そして,メディアの選択に影響する投資家の選好は,投資に対するスタンスにも影響している。これは,投資家各個人の選好や行動が,具体的な情報収集への方法やリスクの許容度へと具現されたことに起因するからである。さらに,投資に対する基本的な態度,すなわち投資スタンスは,当該投資家それぞれの投資リスクへの許容度に依存し,投資のスタイルの決定に関連している。その投資スタイルが,各種情報の相対的重要性に影響している。つまり,投資スタイルの違いが,情報の相対的重要性を定めると同時に,情報選択における選好やリスク許容度が投資スタイルを定めている。このような相互作用は,投資家の潜在的な選好と顕在化される投資意思決定過程の間で生じている。
すべて 2014
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Journal of Accountancy, Economics and Low,
巻: No.8 ページ: 19-30