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2012 年度 実施状況報告書

効率的な経営者報酬契約の遂行と会計情報の機能に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23530608
研究機関関西大学

研究代表者

乙政 正太  関西大学, 商学部, 教授 (60258077)

研究分担者 椎葉 淳  大阪大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (60330164)
首藤 昭信  神戸大学, 経済経営研究所, 准教授 (60349181)
岩崎 拓也  関西大学, 商学部, 助教 (30611363)
キーワード経営者報酬 / 会計利益 / 業績連動 / 事後的清算
研究概要

本研究の目的は,契約理論に基づきながら,効率的な経営者報酬契約を遂行するために会計情報(特に,会計利益)がどの程度有用な役割を果たしているのかを実証的に分析することである。経営者報酬契約が効率的に実施されているかどうかを探る一つの調査方法は,事後的清算問題 (ex post settling up problem) を未然に防ぐ報酬システムが設計されているか否かを検証することである。 先行研究の成果によれば,事後的清算問題が起こる状況は,経営者が未実現利益(つまり,将来的に企業に有利な影響を与えるグッドニュース)について過大に現金報酬を受け取っている場合である。未実現利益が事後的に成立しない場合,企業にとって経営者から過大な現金報酬取り分を返還させることは容易ではない。
同様に,事後的清算問題のフレームワークのもとで,未実現損失(つまり,将来的に企業に不利な影響を与えるバッドニュース)についても経営者への現金報酬はそれを予期して支給されるべきである。そうでなければ,経営者の間違った意思決定の結果について,その結果から逃避することができる機会を経営者に与えてしまうからである。このことから,効率的な経営者報酬契約を遂行しているかどうかの判断基準として,事後的清算問題が起こることを前提に,経営者報酬契約が将来起こりうる業績結果に対して過大な報酬を与えないように仕組まれているかどうかが重視される。このような視点に立つ実証研究は日本の会計研究ではまだ行われていないため,この研究における会計文献上の貢献は高いと考えられる。本研究の実証結果によると,未実現利益よりも未実現損失に対して経営者報酬の感応度が強くなるというリサーチ・クエスチョンに答える結果が得られた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度に続き,経営者報酬,財務データ,ならびに株価データに関するデータベースを準備し,分析に必要となるデータを抽出し,そのデータから実証分析に必要となる変数を選出した。そして,統計的検証を行い,昨年度に仕上げた,“ Excess Executive Compensation and the Demand for Accounting Conservatism”というワーキングペーパーを海外ジャーナルに投稿している。レフリーからの貴重な意見を参照にしながら,上記ワーキングペーパーの改善を行っている。今後も国内外の学会やレファレンスに参加し,論文のブラッシュアップを図りたい。
また,事後的清算の問題について論文にまとめた。効率的な経営者報酬契約における会計情報の役割に関して実証的証拠を積み上げつつある。

今後の研究の推進方策

今年度についても,経営者報酬契約が効率的に実施されているかどうかを実証的に探っていきたい。一つの課題は,効率的な経営者報酬契約は経営者と株主の間の利害の不一致を調整する役割を果たすが,特に,超過報酬という概念を新機軸として利用した場合,経営者の超報酬獲得を抑制するような会計実務(たとえば,保守主義)が有効に働いているかどうかを検証しなければならない。超過報酬という概念は比較的新しく,日本的な要素を加味しながら,超過報酬をより正確に求めるために,期待報酬に関する推定モデルを再度検討していかなければならない。また,保守主義と超過報酬との直接的な関係をどのように説明していくかについて,さらに理論上の整合性について確認する作業を行う必要がある。
また,一つの会計基準で,会計情報の意思決定支援機能と契約支援機能を効果的に両立させることは難しいが,これらの機能の関係性について理論的・実証的に考察していきたい。株価形成における利益に対するウェイトと報酬契約における利益に対するウェイトが関連しているかどうかが研究課題となる。
さらに,経営者と株主の間の利害対立の解決に向けて,経営者報酬と経営者の利益予想の間の関係を調査することによって,経営者が将来パフォーマンスを予測するときに,実際には何を目指しているのかを理解する重要なステップにも焦点を合わせる。経営者の予想利益を含む見通し情報の開示は期待される将来の利益パフォーマンスを伝達する経営者にとって重要な手段である。当期の実現利益と期首の経営者予想との差と定義される予想利益誤差が経営者報酬契約において過去情報,すなわち,利益ベンチマークとして利用できるであろう。さらに,当期末に公表される予想利益と実現利益との差と定義される予想イノベーションが経営者報酬の決定においてどのような役割を果たすかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

該当なし

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] 効率的な経営者報酬契約と事後的清算問題2012

    • 著者名/発表者名
      乙政正太・椎葉 淳・岩崎拓也・首藤昭信
    • 雑誌名

      国民経済雑誌

      巻: 第205巻第4号 ページ: 55-70

  • [雑誌論文] 企業価値評価と経営者報酬契約における会計利益の役割  ―日本企業データを用いた相関分析―2012

    • 著者名/発表者名
      椎葉淳,岩崎拓也,乙政正太,首藤昭信
    • 雑誌名

      會計

      巻: 第182巻第1号 ページ: 98-112

  • [備考] Excess Executive Compensation

    • URL

      http://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=2024827

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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