本研究の目的は、1990年代に急成長した中国の代表的な企業であるハイアールと日本で現在注目されている京セラの管理会計システムとの比較研究であった。ハイアールのシステムは成果主義に特徴があり、京セラとは違っているものの、市場の重視や日常の計数管理では類似している点も多く、とりわけリーダーのカリスマ性や経営理念の重視は、両社とも共通していた。 研究の初年度には実際に青島のハイアール本社を訪問し(平成23年8月20日)、ハイアール集団の香港に上場しているハイアール電器の彭家鈞CFOにインタビュー調査を実施し、またハイアール集団の首席財務官で譚麗霞高級副総裁にもお話しを聞くことができた。同時に本社で新しいハイアールの小冊子や文献を取得し、ハイアールの研究の重要な素材を獲得できた。そしてこれらのハイアールと京セラの研究成果の一端として日本会計研究学会第70回全国大会で「付加価値会計から人本主義会計への展開」をテーマとして研究報告をおこなった(平成23年9月18日)。 本研究の第2年度では、引き続き資料の収集と文献研究を強化するとともに、前年度に訪問できなかったに合肥のハイアールの工場を訪問し、閻部長より合肥ハイアール工場の現状や管理会計システム、原価計算方法について説明を受けた(平成24年9月12日)。またその翌日にはハイアールに吸収された旧三洋の合弁企業である合肥三洋にもインタビュー調査を実施した。 本研究の最終年度(第3年度)でも資料の収集と文献研究は継続して行い、同時にそれまでの研究成果の一端を日本会計研究学会第72回全国大会統一論題にて発表した(「中国における管理会計のイノベーション」平成25年9月5日)。前年度と同じ工場を訪問し、インタビュー調査を実施した。またこの3年間、適宜京セラの訪問とアメーバ経営について推進している関係者との意見交換や交流は実施してきた。
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