会計基準のコンバージェンスの促進に加えて、国際財務報告基準(IFRSs)への対応のあり方やその適用の方法などが問われてきた。米国と日本でのIFRSs適用の規制措置に関わる審議などで問われてきたのは、IFRSs適用によって財務報告の比較可能性や透明性などが果たして向上するかである。本研究は、こうしたIFRSsの役割期待の妥当性について検討することにある。この目的を達成するために解明すべき研究課題は、米国と日本によるIFRSs適用(任意適用と強制適用)の政策論争に関わる制度的・政策的解明と、IFRSs導入による会計の品質の影響分析やその経済的帰結などの実態的・実証的研究による解明である。 両国では、IFRSs強制適用の規制措置を最終化するには至っていない。証券取引委員会(SEC)のシャピロ委員長在任中とその退任後の、委員長を含む5名のSECコミッショナー(委員)がIFRSs規制問題にどのように取り組んできたか、金融規制改革期のSECの規制動向なども交えながら、規制対応の特徴やその構図を明らかにした。また、金融庁の企業会計審議会・企画調整部会合同会議でのこれまでの議論や国内外の動向等を踏まえて公表した「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」の策定に及ぼした影響要因を解明するとともに、新たに提示されたIFRSsの適用方法の制度的・政策的見地からの問題点等を見出した。 また、世界金融危機後のG 20サミットの首脳宣言で掲げられた「単一の高品質でグローバルに認められた会計基準」の意義並びにIFRSsを支持する国際機関の法的根拠とその正当性を解明した。 すでにIFRSsを強制適用する韓国企業をサンプルとした、IFRSs適用による会計の品質への影響分析、経済的帰結およびIFRSsの導入効果などの実態的・実証的研究の成果は、海外の研究誌へ寄稿する準備を進めている。
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