研究課題/領域番号 |
23530611
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
長坂 悦敬 甲南大学, 経営学部, 教授 (00268236)
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キーワード | 原価管理 / シミュレーション / コストマネジメント / フィードフォワード・コントロール / BPM |
研究概要 |
原価管理に関する理論・手法等に関するシミュレーションモデルを開発し、企業人・実務家と研究者が一体となってレベルアップできるプラットホームを構築するための研究を継続して行った。本年度は、各マネジメント手法で融合されるコストマネジメントを顕在化し、枠組みを提示していくことが重要であることを明らかにし、たとえば、製品開発・設計の中での原価企画のみならず、マーケティング戦略の中でのミックスプロダクトと原価配賦問題、ライフサイクルコスティング、調達戦略の中でのグローバル原価計算、危機管理、BCP(事業持続計画)の中での広義の品質コスト、ダイバシティを考えるなかでのHRM(人的資源管理)などのコスト問題がある点を学会報告で指摘した。また、コストマネジメントのためのソリューション開発も重要であり、フィードフォワード・コントロールとダブルループが実現可能なBPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)の手順を明示、実務での効果についても研究論文で発表した。具体的に、バーチャル・ヒューマンによる工程シミュレーションにTDABCコスト・モデルを組み合わせ、フィードフォワード・コントロールを実現し、管理会計の技法と現場管理の品質工学技が一体化されることで、従来では事前にわからなかった不具合を損失として定量的に推定できることがわかった。また、SCM最適化のためには、サプライチェーンの個々の活動をプロセスで把握し、全体を見極めることが必要であり、ERPを組み込んだBPMが有効(KPIの計測、情報共有、情報総合)で、具体的にコストマネジメントのためにKPIの集計、分析、プロセスの診断などを実現するツールが必要になることを研究論文にまとめた。さらに、製造工程を徹底的に可視化するトレーサビリティソリューションは、不良率・コスト低減のフィードバックシステムとして有効であることを企業との共同研究で追求した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の骨子にあたる概念フレームワークを日本管理会計学会フォーラムで「生産企画と融合コストマネジメント」と題して報告、さらに日本原価計算研究学会に具体的なソリューションに関する論文を。日本物流学会にSCMのコスト最適化のためのBI(ビジネスインテリジェンス)ソリューションに関する論文を掲載することができた。プラットフォーム構築のためには、計画にあるABC(活動基準原価計算)と伝統的原価計算の比較シミュレーションや品質コストの感度シミュレーション、BSC戦略マップにおけるKPIの因果関係分析等のプロトタイプができたが、実務データを入力して検証するところまでは至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
企業人・実務家にも有効であり、原価管理の理論、メソッドが応用されるように、表計算ソフトウェアにアドオンできるマクロプログラムの開発を進める。とくに、戦略的計画のための管理会計(経営戦略、中長期計画を立案し、それを実行するための管理会計)で中期経営計画、戦略支援としてプロダクト・ポートフォリオ管理と会計情報、投資経済計算(現在価値法と内部利益率法)、原価企画、BSC(バランスト・スコアカード)、ABC 、ABMおよびABB(活動基準原価計算、マネジメントと予算管理)、BPM(ビジネス・プロセス・マネジメント)についてメゾスコピック・モデルを開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該研究費が生じた理由は、統計ソフトウェアの購入にあたり、バージョンアップの狭間になり、新しいバージョンが年度内に出る予定とのことであったが実際には次年度になってしまったことによる。 次年度は、バージョンアップされたソフトウェアを購入するとともに、プラットフォーム構築のためにWebサーバーを導入し、原価管理シミュレーションが稼働できる環境を整える。タブレット・PC端末、周辺装置、インクトナーなどの消耗品も購入する。さらに調査、学会報告などの出張も積極的に行う。
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