研究課題/領域番号 |
23530612
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研究機関 | 帝塚山大学 |
研究代表者 |
松木 智子 帝塚山大学, 経営学部, 教授 (10347180)
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研究分担者 |
三矢 裕 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (00296419)
窪田 祐一 大阪府立大学, 経済学部, 教授 (40329595)
島 吉伸 近畿大学, 経営学部, 准教授 (20319239)
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キーワード | インタンジブルズ / マネジメント・コントロール |
研究概要 |
今年度は、実務におけるインタンジブルズ(知的資本)のマネジメント・コントロールの実践を理解するためにインテンシブなケース・スタディを行った。 インタンジブルズ(知的資本)のマネジメント・コントロールの調査対象としては「知的資産経営報告書」を作成している中小企業をとりあげた。「知的資産経営報告書」は、企業がもつ自社の強み(つまりインタンジブルズ)を認識し、企業の内部・外部のステークホルダーに報告することを目的として作成されるものであり、このような知的資産に関する報告書は世界的に見ても導入企業が増えつつある。日本においては、「知的資産経営報告書」の採用が、主として中小企業を対象として増えつつある。今年度は、この「知的資産経営報告書」を作成している東大阪の中小企業2社にアプローチし、2社のうちとくに積極的にインタンジブルズの管理を行っている1社にたいしてインテンシブな聞取り調査を実施した。 調査の結果、この中小企業では「知的資産経営報告書」の導入によって、自社のインタンジブルズ(知的資本)を認識し、測定することが可能になっていた。しかし、しかしそれだけではなく、この「報告書」を作成することをきっかけとして、同社ではインタンジブルズを継続的にマネジメントするためのマネジメント・コントロールシステムが構築されつつあることを明らかにした。このケースを通じて、単にインタンジブルズを「報告書」によって報告するだけではなく、インタンジブルズを適切にマネジメントするためには、日々のPDCAというルーチンに組み込むことが重要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度はインテンシブなケース・スタディを実施したが、しかし、いまだ「理論モデル」の構築には至っていない。これは、インタンジブルズのマネジメント・コントロールが企業によって多様であるためである。理論モデルを構築するためには、現状の理解がまだ不十分であり、さらにインテンシブなケース・スタディを積み重ねていくことが必要である。
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今後の研究の推進方策 |
インタンジブルズのマネジメントの“理論モデル”がいまだ構築されていないことを受けて、研究の第3年目の今年は、当初計画していたアクション・リサーチは実施せず、さらにインテンシブなケース・スタディを積み重ねいくことにする。アクション・リサーチを行うためには、導入しようとする対象となるシステムの“仕組み”がかなり明らかになっていることが必要であるが、現段階ではインタンジブルズのマネジメントの“仕組み”がアクション・リサーチを実施することができるほど明らかになっているとは言えない。そこで、今年も別の企業を対象としてインテンシブなケース・スタディを実施することとする。そして、インタンジブルズのマネジメントに影響を与えると思われる時間的な変化やコンテクストを考慮に入れて、それがいかに社員に浸透し、組織に根付いていくのか、ということを明らかにする。こうしたインテンシブなケーススタディを通じて、今年度もさらにインタンジブルズのマネジメント・コントロールのための理論モデルの構築をめざす。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続きインテンシブなケース・スタディを実施するために、以下のような支出を想定している。 ・聞取り調査旅費(関西エリアの企業を対象とする) ・テープ起こし代 ・インタビュー分析ソフト(NVIVO10)の購入 ・資料整理アルバイト代
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