研究課題/領域番号 |
23530618
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐藤 郁哉 一橋大学, 商学研究科, 教授 (00187171)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 査読 / 電子化 / 刊行意思決定 / 学術ジャーナル |
研究概要 |
主として聞き取りを中心にして、日本の大学出版部および学術出版社における書籍刊行に関する査読制度の現状とその背景について検討をおこなった。その結果改めて明らかになったのは、欧米とは異なり、日本の大学出版部あるいは学術出版社において本格的な査読がおこなわれることはきわめて稀であるという事実である。これは、自然科学の分野などを除き、ジャーナル等においても日本の学術界において近年まで査読制度が広く普及していなかったことを反映するものと思われる。 一方、海外の大学出版部および学術出版社における査読の現状について、オフィシャルなアナウンスメントなり公式見解とは別に実際に書籍を刊行してきた著者等に確認したところの結果によれば、欧米においても、実際には査読がきわめて名目的なものにとどまるケースが少なくないという点も確認された。また、査読が刊行意思決定「以前」というよりは、むしろ刊行自体がほぼ確定した後に、一種の確認の手続きの一環としてなされる場合もあることも確認できた。もっとも、これがどの程度広範におこなわれているものかどうかという点については、今後のプロジェクトで確認すべき事項ではある。 電子化と査読制度の関係については、欧米においては、プライオリティの確保と査読の公平性のバランスがきわめて重要な懸案事項として浮かび上がっていることを確認することができた。日本においても、ワーキングペーパーの普及等によって、匿名性を保証することが困難になってきていることが、ジャーナルのエディター経験者だけでなく、書籍刊行において査読を依頼された研究者の証言からも明らかにされている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東日本大震災による実家の被災は、本研究の当初予定に沿った研究計画の実行を困難なものにした。たとえば、それによって当初予定していた本研究課題に直接関連する海外出張を取りやめざるを得なくなった。しかしながら、その後、海外の事情については、学会等による海外出張の際の聞き取りや日本在住の研究者への聞き取りなどを通して、かなりの程度の情報を収集することができた。これによって、次年度以降の調査のための基礎的な準備をおこなうことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降の研究の推進方策に関しては、特に、平成23年度に取りやめざるを得なかった海外出張に力点を置いて、海外の事情をより広く把握するとともに、国内においては、使用言語と会員規定における「国際化」のレベルと査読制度との関係の把握に力点を置く。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に取りやめざるを得なかった海外出張に力点を置くとともに、日本国内においても聞き取りを中心とする作業に必要となる旅費が大きなウェイトを占めることになる。
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